▽ドライバーエラーで負けたフェラーリ
予選ではまたもメルセデスを圧倒し、フロントロウを独占したフェラーリ。追い抜きが難しい鈴鹿サーキットの特性を考えると、勝利は間違いないと思われたが、今回もミスにより勝利を取り逃してしまった。
ただ今回はチームのミスではなく、ドライバーエラーが原因だった。
素晴らしい走りでポールをとったベッテルだったが、スタートで大失敗。今回はレッドライトが点灯してから消えるまでの時間がいつもより長かった。
そのため待ちきれなかったベッテルはブラックアウトの前にクラッチを繋いでしまい動いてしまった。ただすぐに止まったことでアドバンテージを得なかったのと、なぜかシステムに本来あるべきログが残ってなかったのでペナルティはなし。だが一度止まって再び動き出したので、スタートは大失敗。予選三番手のボッタスに抜かれてしまう。
一方のルクレールもフライングこそなかったものの、あまりいいスタートとは言えず、5番手スタートのフェルスタッペンに抜かれてしまう。
今回、台風で土曜日の全セッションが中止になり、路面のラバーが全て流され、日曜日朝に予選をやっただけなので、スタートの路面は明らかにアウト側の奇数グリッドが有利で、ベッテル以外は3位ボッタスと5位フェルスタッペンと順位を上げていた。
フェルスタッペンに抜かれたルクレールだが、ターン2で前を走るベッテルの乱流の影響を受けてアンダーを出して、アウト側にいたフェルスタッペンに接触。
フェルスタッペンはコースアウトして大きく順位を落としてしまう。ルクレールはそのまま走り続けたがフロントウイングにダメージがあり、交換する為にピットインして順位を落とした。事実上ここで彼のレースは終わった。
スタートでミスしたとはいえ、レッドブルよりフェラーリの方が速いのは明らかだったのでルクレールが1周目に無理する必要はまったくなかった。アグレッシブに行くのと無理するのでは全く違うことを彼は学ばなければならない。
スタートで前に出ていれば、勝利は間違いないと思われただけに、残念なドライバーのミスだった。
▽なぜハミルトンはツーストップだったのか?
今回、台風の影響で土曜日の全セッションが中止になったことと、ラバーが流されたことでタイヤ交換のタイミングが難しかった。
鈴鹿は追い抜きが難しいので、基本的にはワンストップで行きたいのだが、タイヤの寿命が読めない。
そこで上位3台はは安全を見てツーストップを選択した。
上位陣で最初に動いたのベッテル。16周目にソフトに交換。ベッテルは当然ソフトスタートなので、これでツーストップは確定した。
スタートでトップに立ったボッタスはポジションを守るために次の17周目にミディアムに交換した。ただ残りの距離を最後まで行くのはかなり厳しい。そしてハミルトンは21周目ミディアムに交換する。
ベッテルは31周目にミディアムに変えて、これで最後まで走りきる。ボッタスはベッテルがツーストップなので、安心して2度目のタイヤ交換を36周目ソフトに交換する。
ここで問題なのはハミルトンである、彼は上位3台の中で1番遅くタイヤ交換している。しかも40周過ぎてもまだタイヤは残っていた。ハミルトンも最後までこのミディアムで走りきるようにペース配分していた。
だがハミルトンがワンストップだと勝つのはハミルトンである。しかもペース悪くないし、ハミルトンもグリップはまだ残っていると感じていた。
だが42周目にメルセデスはハミルトンにタイヤ交換を命じた。結果的に言うとハミルトンは最後まで走りきれたと思う。ミディアムで1番長い距離のガスリーは34周走っている。ハミルトンがワンストップなら31周であった。しかもハミルトンがワンストップならメルセデスはワンツーフィニッシュである。
ではなぜメルセデスはハミルトンにツーストップを命じたのか。それはボッタスに勝たせる為である。基本的にメルセデスはチームメイト同士の争いで作戦を変えることはしない。彼らが二台に異なった作戦をするのは、1人が他のチームと順位を争っている場合だけである。
今回、ハミルトンはベッテルと順位を争っていた。だからハミルトンをワンストップにしても問題はなかった。だがメルセデスはハミルトンをツーストップにした。
これには複数の理由がある。まずひとつはボッタスに勝たせたかった。ボッタスはこれまでもハミルトンに勝たせる為に不利な作戦や強いられてきた。シンガポールではハミルトンを前で戻す為に、わざとペースを落とさせられたりもした。だからメルセデスはこのレースで素晴らしい走りをませているボッタスに勝たせたかった。
二つ目の理由として、もうシーズンも終盤でコンストラクタータイトルはほぼ決まりで、ドライバータイトルもほぼハミルトンで決まりである。つまりメルセデスにとっては、フレッシュなソフトを履いたハミルトンがベッテルを抜いて2位になればよし、抜けなくて三位でも痛くはない。
チーム代表のトトウルフは、タイヤの崖が大きかったので、ハミルトンをタイヤ交換させたとかいろいろと言い訳してるが、後のアルボンとは差(最終的には45秒も差があった)があったのでハミルトンを行けるとこまで行かせて、ダメならタイヤ交換という方法ももちろんあったので、今回メルセデスはハミルトンよりも今シーズン、チームに貢献したボッタスに勝利を与えた。
そしてこの日、ボッタスが勝たなかったら、日本GPはあまりいいレースとは言えなかっただろう。なぜならボッタスは勝利に値する走りを見せていたのだから。
▽苦しかったレッドブルホンダ
5番手から抜群のスタートで3位までジャンプアップしたフェルスタッペンだが、イン側のルクレールに接触されて、コースアウト。この時フロアをかなり痛めて、結局15周目にリタイヤした。
この接触でルクレールはかなり非難されているようだ。もちろんイン側に十分なスペースがあったので、この接触の非はルクレールにあるのだが、この接触がなくてもフェルスタッペンは表彰台に乗ることは、よほどの幸運に恵まれない限り難しかっただろう。
前回も述べたとおり、レッドブルは夏休み明けに大きなアップデートをしていない。大きく進化したフェラーリにはおろかメルセデスにも差をつけられている。予選ではフェラーリとは0.7秒、メルセデスとは0.5秒の大差をつけられている。
これでは流石のフェルスタッペンも勝負のしようがない。
今回もレッドブルは新しいリアウィングを持ち込んだが、持ち込む予定だったフロントウィグは開発段階で予想したほどの改善が見られなかったので持ち込むのを見送っていた。FP1で走ったものの新しいリアウィングはダウンフォースが足りなくて、予選では外してしまった。
つまりレッドブルはもう今シーズンにはあまり興味がなくて、開発の焦点を完全に来年に当てているのである。
次のメキシコではある程度、競争力があると思うが、残りのレースはかなり厳しい戦いも強いられるだろう。
トロロッソでF1デビューを果たした山本尚貴選手。FP1だけの走行なので、走りをどうこうは言えないがクビアトに対して0.1秒落ちのタイムなので、慣れ親しんだ鈴鹿ということを差し引いてもいい仕事ができたと思う。
何より素晴らしいのは、彼のベストラップがソフトタイヤを履いた最初のラップで記録していることである。
新しいタイヤでいいタイムを記録することは、F1ドライバーとしては普通のことである。でも初めて乗るマシンで、失敗の許されない走行でしっかりとグリップを感じ、そのグリップを活かして走行したというのは、彼の能力の高さを感じさせるラップタイムだった。
彼が来年レギュラードライバーになることはないだろうが、未来に向けた素晴らしい機会になったと思います。
そしてホンダが調子を上げてきた今、日本のF1に必要なのは日本人ドライバーなのは、間違いないです。なのでなんとホンダさん、よろしくお願いしますね!