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2011 Rd.6 モナコGP観戦記

▽モナコ・ウィナー ベッテル ベッテルはまた偉大なドライバーへの道を一歩進むことに成功した。 チャンピオンになったベッテルに唯一足りなかったもの。 それがモナコ・ウィナーの称号だった。 ポールポジションが絶対的に有利なモナコGPでPPを獲得したベッテル。 過去7年間を振り返っても、PPが勝てなかったレースはたった1回のみ。 そして見事なスタートを切って、レースをリードして危なげないレースを展開し、楽勝ムードも漂っていたのだが、最初のタイヤ交換で全てのシナリオが崩れた。 バトンが最初のピットストップをおこなった次の周に、レッドブルはベッテルをピットへ呼び戻し、タイヤ交換を実施。 これはバトンが新しいタイヤでタイムアップするので、自分のポジションを守るためのセオリーであり、全く問題がなかった。 ところがなぜか交換する右フロントタイヤを持っていたクルーが、他の人間と話をしている間にタイヤウォーマーを外すのが遅くなり、大きくタイムロス。 (理由は分からないが、バトンのピットストップに反応したために、予定より早くピットインしたので、交換するタイヤの種類を確認していたのかもしれない) せっかく苦労して手に入れた、トップの座をバトンに譲ってしまう。

 これで逆にバトンが絶対的に有利な状況になった。 第2スティントでソフト側タイヤを選択したバトンは猛烈にスパートをかける。 ハードを履いたベッテルはついて行けない。 瞬く間に両者の差は15秒に開いた。 もしこのままの勢いで20秒以上の差ができれば、バトンはベッテルより1回ピットインの回数が多くても勝てる。 バトンが最後のストップした時のベッテルとの差が18秒弱。 その次の周にベッテルがタイヤ交換すると、トップがアロンソ、2位バトン、3位ベッテルの順位になっていた。 事実、バトンの最後のタイヤ交換直後に、レッドブルもベッテルのタイヤ交換しようとしたが、勝ちたかったベッテルはステイアウトを主張し、そのまま走り続けた。 それがベッテルが勝てる唯一の方法だったからだ。 しかしこの作戦では、ハード側のタイヤでの周回数が62周にもなる。 これはタイヤに厳しくないモナコとはいえ、かなりのギャンブルだった。彼らも50周以上をハードタイヤで走りきるか確信はなく、これは本当のギャンブルだった。 そしてベッテルは、自身の判断を証明する、素晴らしい走りを見せてくれた。

モナコは抜けないコースなので、ベッテルは意図的にペースを抑えて、タイヤを温存する作戦をとった。トンネル前のコーナーと最終コーナーの立ち上がりさえ抑え込めれば、抜かれることはないと判断しての走りだ。そうしてタイヤを労りながら、残り6周まで抑え込んだ時に、ペトロフのクラッシュで赤旗中断。

ここでレース終了と思ったのだが、ペトロフを救急車に収容後、レースが再開された。このレース中断時間中に、各車はタイヤ交換をする。 (これは昨年、レース終盤でSCが出て、そのままフィニッシュしたことにより、ショーとして面白くなかった為に、ルールを変えたのだろう) そしてタイヤ交換をして息を吹き返したベッテルは最後まで逃げ切り、モナコGP初優勝を成し遂げた。 赤旗中断中のタイヤ交換についてはいろいろ意見があるとは思うが、タイヤ交換はなくてもベッテルの勝利は揺るがなかったと思う。 それくらいベッテルの走りはアロンソとバトンをコントロールできていた。 もちろんベッテルのタイヤが最後までもたずに、抜かれていた可能性もあるが、それでもベッテルの3位は確実だったわけで、チャンピオンシップをリードするベッテルとしてはポイント的にはあまり痛くはなかった。 (もちろん、モナコウィナーの称号を失うのは痛いが) 結果的にバトンの作戦により、消極的に1ストップを選択したベッテルだったが、最後までタイヤを保たせたその走りは見事としかいいようがない。 前回のスペインGPでも見せた素晴らしい守りの走り。 ベッテルの走りは毎回進化しているように見える。 彼の走りはモナコ・ウィナーの称号にふさわしいドライビングだった。 さて以前からモナコとカナダGPは特殊なサーキットであり、他のドライバーにもチャンスがあると述べてきた。 実際にモナコではバトンにもアロンソにもチャンスはあった。 しかし勝ったのはベッテルである。 次のカナダGPにベッテルが勝つようだと、本当にチャンピオンシップは終わりそうば気配である。 しかし、カナダでベッテルにストップをかけられる男が次に紹介するハミルトンである。 ▽不運だった ハミルトン モナコでのハミルトンは不運としか言いようがなかった。 予選ではアタック中にペレスのクラッシュで赤旗中断。 最後はアタックラップが1周しかなく、タイヤが動作温度まで上がらなかったので不発に終わり、予選は7位。 しかもシケイン不通過のペナルティでQ3の最速ラップが取り消されて9位からのスタートとなった。 さすがのハミルトンも予選9位からではモナコで勝つことは不可能だった。 レース中も何度かオーバーテイクするが、ペナルティを取られて後退。 最後は7位でフィニッシュするも不満の残るレースとなった。 ハミルトンのペナルティには毎回、賛否両論あるが、私は彼の走りが特に危険だとは思わない。 確かに今回は強引な追い抜きでペナルティも仕方ないとは思うが、モナコでオーバーテイクを仕掛けること自体がクレージーな事であり、アタックしようとしたハミルトンのファイティングスピリッツは素晴らしいと思う。 彼の走りはF1に絶妙なスパイスを加えている。 ただ彼のレース後の発言が、ペナルティ問題を彼の個人的な問題に切り替えてしまったことに、同情の余地はないが。 さて次はルイスが得意とするカナダGP。 ここで彼が勝てなければ、ベッテルに追いつくことは不可能になるだろう。 次回はハミルトンの頑張りに期待しよう。 ▽勝利を逃がしたバトン 予選2位からスタートして2位をキープしていたバトンに16周目、チャンスが巡ってきた。 トップを走るベッテルがタイヤ交換に時間がかかり、バトンがトップにたつ。 これでバトンはベッテルのピットインのタイミング見ながら、レースができる有利な状況だったのだが、バトンはベッテルの動向を見ることなく先に先に動いて3ストップを選択し、33周目と48周目でタイヤ交換を実施。 フレッシュなタイヤで素晴らしいラップタイムを連続し、第2スティントでリードを築き、第4スティントでは、タイヤ交換後あっとという間にベッテルとアロンソに迫るが、ここはモンテカルロの市街地。 最終的に、バトンはベッテルとアロンソを抜けずに3位終わる。 もし赤旗がなくて、ベッテルのタイヤ交換がなくてもバトンは勝てなかっただろう。それにしてもバトンはなぜ、トップに立った時点で2ストップにしなかったのか疑問が残る。 なぜなら、モナコではタイムよりもポジションを重視したレース展開をしなければならない。 ここは追い抜きはほぼ不可能だからだ。 モナコ以前のレースでマルチストップが有利だったのは、タイヤに厳しいサーキットだったのと、追い抜きが可能だったからだ。 だからこのサーキットで3ストップはあり得ないと予想していたのだが、マクラーレンはアグレッシブな作戦をとってきた。 予選二位から勝つには、それしか方法がないと考えたのかもしれない。 だがバトンがトップに立った時点で、作戦を変更しても良かったのではないだろうか。タイヤの状況を考えても、バトンは最初のピットインの後でも、作戦を変更することは可能だったと思える。 バトンがうまくタイヤを使えていれば勝てるチャンスもあった。 日曜日は最速だったバトンだけに3位は残念な結果だ。 ▽残念な2位のアロンソ もしベッテルが2ストップを選択していれば、勝者はアロンソだった。 しかしベッテルの素晴らしい作戦と走りで、アロンソは2位で満足せざるを得なかった。 今のフェラーリのマシン戦闘力でアロンソが勝てる唯一のGPだっただけにアロンソは悔しかったとは思う。 事実、今回は2位表彰台だったが、嬉しさを爆発させる訳でもなく、淡々とインタビューに応じていた。 それにしてもアロンソの走りには、毎回唸らせられる。 今のフェラーリの戦闘力で、2位は不可能に近いポジションだろう。 しかもベッテルがギャンブルしなければ、勝ちも見えていた2位の価値は高い。 ▽驚異の可夢偉 5位 毎回毎回、可夢偉の走りには驚かされる。 他のサーキットで5位であれば、今の可夢偉の実力を持ってすれば、それほど驚くほどではない。 しかし難攻不落のドライバーズ・サーキットであるモナコで5位は価値がある。 しかも12位スタートからの5位である。 最後にウェバーに抜かれる前には4位だったのだから、見事である。 もしペトロフの赤旗がなければ、逃げ切れた公算が大きかったのだが。 欲を言えばウェバーに抜かれた場面、もう少しイン側を走るブロックラインを通れば防げたかもしれない。 だが最速レッドブルと無理して接触されてリタイヤするのを考えたのかもしれない。 ベッテル、アロンソ、バトンが通り抜ける直前でペトロフのクラッシュが起こったので、3台ともいなくなれば、可夢偉が勝つ可能性もゼロではなかった。 4位とはそういうポジションだった。 そしてモナコでは、10年に一度、そのまさかが起こるサーキットでもあった。 今回は起こらなかったが。 それくらいエキサイティングな彼の走りだった。 次のカナダGPも楽しみである。

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