▽タイヤの心配がなかったインドGP
インドGPは今年の他のレースとは違いタイヤが非常によくもち、ほとんどのチームはタイヤのことを心配することなくレースに臨んだ。それゆえ、ほとんんどのドライバーは1ストップを選択。それによりレース展開は少々退屈になったことは否めない。特に予選11位以下のドライバーはタイヤ選択自由という武器を有効に使うことができなかった。ただタイヤの心配が少ないこともあり、ペースを抑える事は少なく、レースらしいレースとなった。
6周走った中古のタイヤを使ってスタートしたアロンソもポールポジションからスタートしたベッテルも最初から1ストップ狙い。その方が5秒から15秒速いと予想されていたからだ。アロンソはベッテルが2ストップでいくことを願っていただろうが、当然ベッテルはアロンソにあわせる作戦。アロンソがベッテルより先にピットへ向かった時点で勝負ありだった。
もし第一スティントのマクラーレンのペースが良くて彼らが2ストップを選択すれば、ベッテルは難しい状況に追い込まれたが、彼らはそれどころではなかった。
マクラーレンは第一スティントで履いたソフトのフロントタイヤに苦戦していた。特にバトンはフロントタイヤにブリスターが出ており、極端なアンダーステアに見舞われてペースを落とさざるを得なかった。これにより第一スティントで上位との差を広げられて、第二スティントではハードを履いていいペースを得られたのだが、トップ3を追い抜くことはできなかった。
ほとんどのドライバーのタイヤの状態はよかったのだが、その中でもベッテルのタイヤは驚異的だった。もちろん彼はトップを走っているので有利なことは間違いがないのだが、彼は多くのドライバーがピットインした後でも全体ベストのセクタータイムを出す余裕があり、さらに周回を重ねることも可能だった。もちろん上位陣の最後にハミルトンがタイヤ交換を済ませると、不測の事態(セーフティカーが出るなど)に備えてタイヤ交換。もしベッテルがハードタイヤを履いてスタートしていれば、ゼロストップでレースを走りきれるのではないかと言うくらいタイヤの持ちは素晴らしかった。
結論としてピレリは少々、保守的なタイヤ選択をしたといえる。
▽レッドブルの速さとフェラーリの反撃
レッドブルはこのレースでも圧倒的な速さを見せつけた。ただ前のレースと違ったのは2位がウェバーではなく、アロンソだったことだ。もちろんウェバーが2位の座を失ったのは、KERSが使用できなくなったことが大きい。だがそれでもウェバーが苦境に陥った時に、すぐに後ろに付けていたのはアロンソである。それまで驚異的なペースを見せるレッドブルに対して決して諦めず、アタックしていたからこそ、チャンスはアロンソの目の前に開かれた。
フェラーリはこのレースからアロンソにも新しい排気レイアウトを導入し、レースペースはかなり改善した。ベッテルには敵わなかったが、レッドブルに迫ることができた。これは彼にとってはポジティブな要素だ。問題は予選。レッドブルは予選の一発の速さを出す術をマスターした。こうなるといつものベッテルショーが開幕してしまう。フェラーリは予選の速さを身につけなければ、ベッテルのミスを待つだけの展開になってしまう。
ただアロンソの2位は、望みうる最高の結果と言っていい。彼らのこの日の目標はウェバーを抜いて2位になることだった。これによりこれだけベッテルが圧勝しているにも関わらずわずかに13ポイントだけである。
残りは3レースだけであるが、ベッテルもまだまだ気を抜くわけにはいかない。
▽苦戦する可夢偉
多くのドライバーが1ストップを選択すると、後方からスタートするドライバーは
難しい。可夢偉は予選Q2で脱落して17位グリッドからのスタートとなった。彼はQ2でタイヤを稼ぐために燃料を少なくして1回だけのアタックを選択。しかしそのアタック前にピットのテレメトリーシステムがダウンするトラブルがあり、適切なKERSの回生モード(※)を選択することができず、1コーナーで激しくタイヤをロックさせて万事休す。
レースでは多くのドライバーが1ストップだったので後方から追い上げる可夢偉には戦術面で違いを生み出