F1 ニュース&コラム Passion

2012シーズン総集編 part2 可夢偉とペレスの明暗とピレリの謎

▽可夢偉 念願の表彰台もシート喪失の危機 可夢偉はついに今年表彰台に上ることに成功した。しかも地元の日本GPである。これ以上はないという状況にもかかわらず、来年のシートを失ってしまった。以前の観戦記でも述べたように、移籍市場においてはシーズンの前半が非常に重要である。 そうしないと移籍市場に名前があがらないのだ。昔はストーブリーグと呼ばれた移籍市場。 それはシーズン終了後に話が進んだからである。今はプールリーグとも言われる。それは夏場に盛り上がるからである。 F1の場合、契約は非常に複雑なので一日二日で決まるものではない。そしてF1の関係者もドライバーの能力というのを完全に理解できているわけではない。F1というスポーツはドライバーの能力にマシンが介在するので、ドライバーの能力を見極めるのは非常に難しい。 チームの代表者の中にはモータースポーツの経験がない人も多い。だからこそわかりやすい結果は非常に重要で、必要なのだ。例えペレスが他のドライバーと違うタイヤ選択をして表彰台に乗ったとしても、それは考慮されない。 可夢偉の来年のシートはない。だが彼には才能がある。 それを頼りに何とか2014年に向けて頑張ってほしい。 ではペレスの移籍はどうだろう。 私の記憶が正しければ、速いドライバーは常に速い。マシンが遅ければ遅いなりに速い。そしてマシンが良ければとてつもなく速い。そう考えると彼の日本GP以降の走りには正直落胆させられる。 彼のF1人生は始まったばかりだが来年、いきなり正念場を迎える。もしマクラーレンで結果を残せれば、チャンピオンまっしぐらだし、ダメならF1ドライバーとしての命運を絶たれる。それくらいトップチームへの移籍とは期待と不安が入り交じったものである。ザウバーでは結果が残らないことをマシンやチームの責任にできたが、マクラーレンではそれはできない。 彼がチャンピオンの資格を持つ男なのか、そうではないのかは、シーズンが始まればすぐにわかる。彼のチームメイトはチャンピオン経験のあるバトン。そのバトンに勝てないようだと厳しいだろう。? ▽ピレリタイヤの謎? 今年のピレリタイヤに関して言えば、チームは温度への過敏な反応に悩まされた。特にスーパーソフトとソフトタイヤはこの傾向が顕著だった。この二種類の柔らかいタイヤ、動作温度領域は4種類のタイヤの中で最高(ソフト)と最低(スーパーソフト)と両極端だったが、温度変化に敏感という性格は同じだった。 そうなるとソフトタイヤで気温が低い場合、リアは温まるがフロントは温まらないという現象が頻繁に出た。リヤは加速する際にタイヤを使うので温まりやすいが、フロントはコーナーの一部のみしか負荷がかからないので、温まりにくい。リヤは温まりグリップがあるが、フロントはグリップがない状態になる。そうなると極端なアンダーステア(※)になる。 ソフトタイヤは35度近辺が一番パフォーマンスがいいが、それを外すと極端にグリップが落ちる。シーズン前半、バトンが無線でひどいアンダーステアだと叫んでいたのはそのためである。だが彼はミディアムやハードに履き替えると何の問題もなく走れる。 この二種類のタイヤは温度変化に鈍感だから、フロントとリアの温度差があってもグリップ力の差はそれほど極端ではないので乗りこなせてしまう。 今年のタイヤは柔らかいほうの二つと硬いほうの二つでは性格が全く異なっていた。これは普通ならあり得ないことである。つまりピレリはこの二つのグループのタイヤを別々の時期に別々の人が別々の材料を使用して、設計したと考えていいだろう。そうでないとこの性格を理解することは難しい。 そうすることで、ピレリはチーム側がタイヤを理解することを妨げ、レースを面白く盛り上げようとしたのだろう(それとも単に予算か人事の関係で偶然そうなっただけかもしれないが。彼らが積極的にこの事実を広報しないと言うことは、案外そうかもしれない)。 ちなみにスーパーソフトも作動温度領域はソフトより低い(20度近辺)が、性格は同じで温度変化に敏感であった。ただスーパーソフトは登場回数が低いため、それほど深刻な影響をおよぼさなった。 ではどうしてバトンは苦しんだのに、ハミルトンは困らなかったのだろうか。それは二人のドライビンスタイルの違いがある。車載カメラでみると分かるようにバトンのハンドリングはスムーズである。一方のハミルトンは小刻みに修正している。ところがこの二人のアクセルワークはハンドリングとは全く逆。バトンは小刻みに修正し、ハミルトンはそうではない。つまりハミルトンはフロントを修正することにより結果的に、フロントタイヤの温まりがよくなり、マシンのバランスが取れていたのだ。 さらにいうとピレリタイヤは頑張らなくても速く走れるタイヤであった。普通はブレーキングで前荷重にするとグリップが増す。100荷重をかけるとそれに比例してグリップがよくなる。ところが今年のピレリタイヤは、頑張りすぎると滑ってしまいロックしやすかった。 シーズン序盤、ハミルトンが苦労していたのはこれである。可夢偉が苦労したのも同じ理由。逆に突っ込みで頑張らないペレスはこのタイヤと相性がよかった。可夢偉に言わせると頑張らなくても、曲がるタイヤらしい。 ただ最後に言うと、今年ピレリタイヤを完全に理解できたものは誰もいなかった。それほど難しいタイヤであったということだ。その性格が今年のレースを盛り上げたのは間違いがない。 ただ私はこれを良しとしない。確かにシーズン前半は8人の違う勝者がでた。しかしどのドライバーもタイヤを労わるために、全力で走ることは少なかった。これでは面白くない。 例え同じドライバーが勝ち続けようと、アメリカGPのようにどのドライバーもタイヤを心配することなく、全力でドライビングする方が私は好きだ。F1は耐久レースではない。最速のマシンを最速の男たちが、最速で駆け抜けるから面白い。そういう時代を懐かしむ私は懐古主義なのだろうか、それとも単に年をとっただけなのだろうか。 ※アンダーステア マシンのフロントが曲がりにくい傾向にある状態をアンダーステアという。逆にマシンのリヤが曲がりすぎる傾向にある状態をオーバーステアという。この言葉は相対的な状態を表すので、同じマシンに乗ってもドバイバーが違うと両極端な表現になる場合もある。またドライバーの好みにより、アンダーステア傾向を望む人もいれば、オーバーステア傾向を好む人もいて、より一層理解を難しくしている。  

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください