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リザーブドライバーの価値

2013年の残り2レースを欠場するライコネンの代わりのドライバーがコバライネンに決まり、彼はアメリカGPで出走した。だがロータスのリザーブドライバーはバルセッキではと不思議に思うかもしれない。 確かに契約上はロータスのリザーブドライバーはバルセッキである。こんな時に代わりにドライブしないのであれば、リザーブドライバーとしての意味がないのではと考えるのは当然である。本来、リザーブドライバーとはレギュラードライバーに何かあった時に、代わりにドライブする存在である。2009年にティモ・グロックが鈴鹿で怪我をして、残りの2レースを可夢偉がドライブしたことを覚えている方も多いだろう。これこそが本来のリザーブドライバーの役割である。 ところが昨今の経済状況の悪化がこの状況を大きく変えてしまった。簡単に言うとリザーブドライバーとは、ドライバー側がお金を払いレースに帯同する資格を得たドライバーとなってしまった。払うお金の額やエンジンメーカーとの関係の強弱によって、リザーブドライバーの価値も変わってくる。たくさんお金を払えば、金曜日のフリー走行1回目に走る権利を買えたりする。更にお金を払えば複数回走ることもできる。全ては交渉次第である。もちろんリザーブドライバーの多くがGP2やフォーミュラ・ルノーなどで結果を残したドライバーが多いので、実力がないわけではない。 だが一部の例外を除いて、お金を払ってリザーブドライバーになっているドライバーが多いのもまた事実である。だがその中でもコバライネンは実力でリザーブドライバーの地位にある数少ないドライバーである。というより彼の場合、レギュラードライバーより実力も実績もあり、普通ならばレギュラードライバーになっていても、おかしくない存在である。だが最近の経済状況の悪化により活動資金が集められないチームは、スポンサーがついている2人のドライバーを起用。だが彼らは経験が少なく、マシンの最高のパフォーマンスを出すことができず、開発にも支障をきたすので、実力と実績のある彼にチームは今年6回のフリー走行のドライブをまかせている。 というのも最近のF1マシンは安全性が増し、ドライバーが怪我をすることは少なくなった。また体調管理も専門家がサポートしていて、万全である。つまりレギュラードライバーが出場できないという事態が発生する確率が低くなった。だが常に不測の事態は起こりえる。本当にリザーブドライバーが必要になった時に、チームは困ってしまう。 実際に2009年フェラーリのマッサがハンガリーGPで不幸な怪我をすると、フェラーリはシューマッハーに復帰を打診するが断られ(今回と同じである)、結局テストドライバーのルカ・バドエルに任せるが経験不足は明らかで、最終的にフォースインディアからフィジケラを獲得した。 もっとも実績のあるドライバーはリザーブドライバーになることを嫌う。あるチームのリザーブドライバーになると他のチームからオファーがあった時に、契約が難しくなるからである。今回のようにチームがコバライネンを放出してくれればいいが、もしコンストラクターズランキングを争っていたりすると交渉は複雑になり、移籍は許されない。

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