ハミルトンはどうして不可能を可能にできたのか?
モナコGPで勝利したメルセデスのルイス・ハミルトンは二つの不可能を可能にして見せた。
まず最初の不可能はウエットタイヤから直接ドライタイヤに履き替えたことである。通常、路面が乾いていく状況ではウエットからインターミディエイトタイヤに変えて、最後にドライタイヤに履き替える。
ところがハミルトンは乾く一方の路面の中、ウェットタイヤで31周を走行し、直接ドライタイヤに履き替えた。
ピレリのポール・ヘンベリーはこの冬の間、ウェットタイヤに少し変更を加えたと説明した。
「ウエットとインターミディエイトタイヤ間の差を縮めたかった。そして今回はそれが明確に表れた」
「インターミディエイトとウェットとの性能差が大きすぎて、インターミディエイトからウエットタイヤに変更できないというドライバーからの声があった。ウエットタイヤに変えるとタイムを失ってしまうからね」
「ウェットタイヤの性能を引き上げるように改良した」
つまりピレリの今回のウェットタイヤの変更は、インターミディエイトとウェットタイヤの差は縮める為にされた。だからインターミディエイトとウェットタイヤが同じ程度の距離を走っても問題がなかったというわけである。
ではその後、ウルトラソフトに履き替えたハミルトンが47周も走れる不可能はどうして可能になったのであろうか。
「それは路面温度が低く、まだ少し濡れている部分が残っていたから、タイヤの寿命を延ばすことができた」
「モナコの路面は滑らかだしね。摩耗レベルは練習走行時から低かった」
ハミルトンはレース前にウルトラソフトは紫色したスーパーソフトだと言っていた。
ハミルトンの発言をうけて、ヘンベリーは次のように言った。
「今では彼もその発言を喜んでいると確信しているよ」
「ウルトラソフトとスーパーソフトとのタイム差は0.8秒くらいで、それが我々の目標だった」
「ウルトラソフトは予選用のタイヤではない。いろいろなサーキットで使うからね」
「モナコでは極端なやり方も可能だが、シンガポールやカナダでは同じようにはできない」
ウルトラソフトが長距離持ったのは、ポール・ヘンベリーが言うように、気温とモナコ特有の路面にあると見る事ができる。
上記のような特殊な条件が重なった為に、ハミルトンの極端な作戦は作成した。だが同じ作戦が同じタイヤセットが持ち込まれるカナダでは通用しない。
カナダはモナコよりはるかに高速だし、路面は滑らかだが縦方向の負荷は大きいので、同じワンストップでいけたとしてもモナコのような極端な作戦は通用しないだろう。
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