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バトルなきチャンピオン争い

Großer Preis von Abu Dhabi 2016, Freitag

Großer Preis von Abu Dhabi 2016, Freitag

バトルなきチャンピオン争いというのが、最終戦のアブダビGPを見終わった感想である。ロズベルグは最終戦で3位以内、つまり表彰台に登れば、ハミルトンの結果を問わずチャンピオンになれた。 だから2位を走るロズベルグはトップのハミルトンを抜く必要は全くなかった。そういう意味でロズベルグがハミルトンにオーバーテイクを仕掛けなかったのは当然である。 ハミルトンは意図的にペースを落としていたし、それによりロズベルグがミスをして4位以下に落ちることを願っていた。ハミルトンはその気になれば、簡単に0.5秒から1秒速く走ることができただろう。 だがそのハミルトンもセクター1と2では速く走らなければならなかった。なぜならそこで遅く走るとロズベルグに抜かれるかもしれないからだ。そのため、ハミルトンはロズベルグと3位以下の差を縮めることには成功したが、セクター3で遅く走ることによりロズベルグもまたミスをする可能性が低くなるというパラドックスに悩まされた。 レース終盤、ロズベルグはチームに向かって自分を先に行かせるように懇願している。抜かせた後に3位以下を引き離した状況であれば、フィニッシュまでにハミルトンにトップを譲ってもいいとすら述べていた。だがハミルトンに例えそんなチームオーダーが出されたとしても、ハミルトンがそれを受け入れることはなかった。 ロズベルグが自力でチャンピオンになれるとわかったアメリカGP以降、ロズベルグはひたすら2位を目指して走っていた。今のメルセデスのマシンのパフォーマンスを考えれば難しくはない仕事である。 実際、今年のロズベルグはハミルトンにトラブルやミスがない時には勝てていない。唯一ハミルトンと順位を争ったのはスペインGPだけで、この時は接触して両方ともリタイヤしている。 レース前からハミルトンはわざと遅く走るのではないかと予想はあった。メルセデスのマシンがあれば2位になるのは難しくはない。ハミルトンがわざと遅く走り、2位のロズベルグを3位以下のドライバーの脅威を感じさせてミスを誘い、ロズベルグを4位以下にさせることしかハミルトンにはチャンスが残されていなかった。 わざと遅く走るF1ドライバーというのも見たことがなかったし、ハミルトンのこのような走りは賛否両論あるだろうが、これしか彼にはチャンスがなかったのも事実である。 ロズベルグには、ハミルトンが遅いから先に行かせてくれではなくて、コース上でオーバーテイクを仕掛けて欲しかった。ハミルトンを抜けるかどうかはこの際、問題ではない。もしハミルトンがロズベルグに脅威を感じていたら、ここまであからさまに遅く走ることはなかっただろう。 もちろんオーバーテイクを仕掛ければ、ハミルトンがロズベルグに対してドアを閉めることも考えられたから、ロズベルグこのような走りを批判することはできない。彼は彼の仕事をしただけである。 そしてもしハミルトンがロズベルグに対してドアを閉めたならば、その責任の全てはハミルトンにある。ハミルトンには遅く走る権利もあるし、ロズベルグにもある。 だがそれは私の見たいF1ではない。長い間F1を見てると嫌なレースを見ることもある。わざとぶつけてチャンピオンになったドライバーもいたし、チームメイト同士で自滅したドライバーもいた。その時もやるせない思いを抱いたものだが、この日のレースはまた違った。 私達がF1に熱狂するのは、大の男が世界一速いドライバーの座を争い人生をかけて戦うからである。その結果、接触が起こってもそれはそれで残念ながら受け入れられる。だが今日のようなレースを見せられて、誰が喜ぶというのであろうか。 チャンピオンシップはひとつのレースだけで決まるわけではない。ロズベルグは年間21レース戦い、ハミルトンに勝った。そのことは素晴らしいとである。 だがなにか物足りなさの残った最終戦であったことも事実である。