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ペナルティが決めたウィナー カナダGP観戦記

 
▽ベッテル失望の2位
誰もが望まない形での勝利でしたね。そう、ハミルトンでさえもこんな形での勝利は望まなかったでしょう。
 
ペナルティの是非の判断は置いとくとして、ペナルティが課された理由は理解できます。理由を簡単に説明すると、コースアウトしたベッテルが安全にコース復帰しなかったからというものである。つまりコースに戻る時にハミルトンに幅寄せして、接触の危険があったという事ですね。それは確かにそうでした。
 
あの場面でハミルトンはアクセル戻してますしね。ただベッテルの言い分もわかります。彼はコントロールを失っていたわけですし、コース幅も狭いし、壁にヒットしないようにするのに精一杯だったでしょう。
 
スチュワードはベッテルがコースに戻った時に、アウト側つまりハミルトン側にステアしてることをあげているが、動画を見る限りマシンを安定させる為にカウンター当ててるようにしか見えない。
 
過去にシケイン不通過して利益を得た時でもペナルティが出た記憶があまりありません。ただベッテルが言うように、ハミルトンはインから抜けばよかったというのもちょっと無理ありますしね。
 
ペナルティ出す理由もあり、出さない理由もあり、どちらとも取れるのですが、これまで取らなかったペナルティをここで取るなら、はっきりとした基準を示すべきですよね。個人的にはペナルティなしでよかったと思います。
 
またハミルトンの素晴らしい走りが、ベッテルのミスを誘ったのも間違いない事実です。ハミルトンがあの時もう1秒後方にいたらペナルティはなく、ベッテル優勝で何事もなくレースは終わっていたはずです。
 
それにベッテルがハミルトンを5秒離せなかったのも事実です。ハードタイヤではハミルトンの方が速かったと思います。
 
ではレースを振り返ってみましょう。
 
 
▽ベッテル会心のポール
久しぶりベッテルのスーパーアタックを見せてもらいました。レッドブル時代によく見せていた最後にタイム出してライバルを落胆させ、ポール取るあのやり方ですね。
 
セクター1、2はメルセデス有利で、セクター3はフェラーリ有利で、全体ではほぼ互角だったのですが、ベッテルはセクター2でもハミルトンを上回り、ポールを獲得しました。昨年のドイツGP以来、久しぶりのポールでした。
 
このサーキットはハミルトンが得意としているだけに、価値のあるポールポジションでした。
 
 
▽ベッテル優勢でレースは進むが
レースはミディアムスタートでも、ソフトスタートでもハードに交換してワンストップレースが予想されました。日曜日は快晴で路面温度がかなり高く(路面温度50度!)、タイヤの持ちが心配されていたからです。
 
上位陣のスタートは、ターン1までの距離が短い事もあり順位の変動はなし。そのままレースが進みます。トップのベッテルがタイヤ交換したのは26周目。本来先を走るベッテルは2位ハミルトンの出方を見てタイヤ交換できるのですが、ハミルトンとの差があまり開かず、ハミルトンが先にタイヤ交換するとアンダーカットされる危険があったので、先手を打ってタイヤ交換したのだと思います。
 
ハミルトンは先に動かれたのですが、すぐにリアクションせず、2周走りベッテルとのタイム差を見て、走らせ続けても得るものがないと判断して28周目にハードに変えました。このあたりの冷静な判断もメルセデスらしいですね。
 
ベッテルはユーズドのハードタイヤしか残っておらず、ハミルトンは新品のハードタイヤを持っていた事も、ベッテルが先に動いた理由の一つだったと思います。ハミルトンに先に入られると、ベッテルは苦しかったですからね。
 
そして48周目にベッテルのあのコースアウトがありました。私の感想は、ベッテルはあそこでそんなにプッシュする必要があったのだろうかというものです。
 
メルセデスが抜けるとしたら、ピットに戻ってくる長いストレートしかなく、しかもストレートはフェラーリの方が速いわけです。例えDRSの助けがあったとしても、ベッテルがヘアピンの立ち上がりで大きなミスをしない限り、ハミルトンがベッテルを抜くのは難しかったと思いますし、実際そうでした。
 
であれば裏のコーナー区間で、コースアウトするほど攻める理由がわかりません。最近勝利から離れている事も影響したかもしれませんし、外部からはわかりにくいのですが、ルクレールが活躍していて、チーム内のパワーバランスがルクレールに傾いているのをベッテル自身が敏感に感じ取っているのかもしれません。フェラーリの将来がルクレールと共にあるのは間違いのない事実ですからね。ちょっと焦りが見えたと思います。
 
 
▽力負けしたレッドブル
予選でのレッドブルは不運ではありましたが、避けられたかもしれなかったですね。予選Q2で最後のアタックに出たフェルスタッペンでしたが、マグヌッセンのクラッシュで赤旗中断になり、タイムを更新できずに脱落しました。
 
このコースは一般道路なので路面がスムースでタイヤは何周も持ちます。燃料を多少多く積んでいても、超高速コーナーが少ない事もあり、影響は限定的です。ただ抜きにくいのでクリアラップが取れないと難しくなります。つまり高速のモナコと考えていただければいいと思います。
 
であれば、こう言う事も想定してもう少し早く出す方法もあったと思います。もちろん一般道路を利用するカナダGPでは、少しでも遅い方が、路面にラバーが乗るので有利なのはわかりますが、予選Q2ですからね。レッドブルの実力があれば、それでも通過タイムは出せたと思います。
 
でもそもそもQ2最初のミディアムでのアタックでメルセデスやフェラーリほどいいタイムが記録できなかったことが大きく影響してるんですけどね。日曜日の天候が暑くなりソフトスタートだと厳しいことはわかっていたので、上位陣はミディアムスタートを望んでいたのですが、レッドブルにはうまく合わなかったのかもしれません。
 
9位スタートのフェルスタッペンは、それでもボッタスには追いつけたのですのが、気温が高かったので前のマシンに捕まると吸気温度が高くなりパワーが限定されていて、抜くことはできませんでした。
 
ボッタスがタイヤ交換した後は悪くないペースで走れましたが、今回は予選のミスがなくてもメルセデスとフェラーリに勝つのは難しかったでしょうね。
 
それでも3台が入賞したのは、ホンダのパフォーマンスが安定しているからだと思います。ただパワーサーキットのカナダでルノー勢が善戦していた事を考えると、まだまだ安心はできませんが、次のフランスGPに期待しましょう。