2007 Rd.4 スペインGP観戦記
▽祝!スーパーアグリF1 ポイント獲得
今回はまず、この話題から取り上げないわけにはいかない。
スーパーアグリF1が佐藤琢磨の手によって、初のポイント獲得した。
たった1ポイントだが、この1ポイント並大抵の重さではない。
ほとんど不可能と言われていた、プライベートチームとして新規参入し、わずか1年半で初ポイント。
ホンダのバックアップがあるとはいえ、快挙と言っていいだろう。
今回、リタイヤが多かったことや、ホンダやトヨタの不振が味方したことは間違いない。
さらにルノーは給油装置の故障で、十分な燃料が給油できないトラブルが発生し、予想外の3ストップを強いられた。
そう言う意味で幸運であったことは間違いないが、幸運なときにその場所にいるためには、大変な努力が必要である。
そして、そのチャンスを勝ち取るためには、実力が必要なのである。
今回も、最後のストップでフィジケラの前に出たのは、ほんの少しの差である。
ほんの少しでも気を抜いた走りをしていたら、チャンスは消えていた。
それに彼らは予選の第二ピリオドで佐藤琢磨がストップするというトラブルを乗り越えてこの結果を手にした。
これを実力と言わずして、何を実力というのであろうか。
私は開幕前、スーパーアグリF1は序盤戦に入賞のチャンスがあると思っていた。
だが、開幕遠征の三戦を終え、そのチャンスの扉が閉じかけようとしていただけに、この入賞はうれしい。
スーパーアグリF1位の規模のチームだと、シーズンが進むと開発速度の差から、大きなチームに差をつけられてしまう。
だからこそ、この1ポイントは価値がある。
佐藤琢磨の頑張りと、ミスのないピット作業などが結果として結びついたのだ。
今のF1は本当に一瞬たりとも気が抜けないシビアな戦いだ。
この1年半で佐藤琢磨もスーパーアグリF1のスタッフも大きく成長した。
今シーズン、本家のホンダが絶不調で出口も見えていないだけに、スーパーアグリF1の活躍は貴重だ。
このポイント獲得により、カスタマーカー問題が更にヒートアップすることは間違いない。
スーパーアグリF1の1ポイント獲得により、スーパーアグリF1がポイントを剥奪される可能性は低くなった。
まさか、バーニー・エクレストンもそんな無茶はしまい。
問題は資金の分配問題。
スーパーアグリF1は今回のポイント獲得で、コンストラクター10位が見えてきた。
そうすれば来シーズンからの運送費が削減できるし、TV放映権の分配金も獲得できる。
その資金で、チームはさらなる前進が可能だ。
一方のスパイカーにしてみれば、この特典がなくなればチームの存在を揺さぶることのになる。
次のモナコGPでは、結論を出すとバーニー・エクレストンは明言しているが、公正明大な解決を望みたい。
▽マッサの賭け
勝負は第一コーナーで決まった。
マッサは1コーナーでアロンソと接触すると、そのまま独走しシーズンの二勝目を飾った。
しかし、この勝利、実際にはかなりきわどい物だった。
勝負の第一幕は予選。
マッサとアロンソはほぼ同じ燃料を積んでアタック。
マッサは0.03秒の差でアロンソを抑えポールポジションを獲得した。
条件は全く同じで、アロンソを逆転した走りは見事だった。
だが、予選二位のアロンソはスタートから長い1コーナーまでの間にマッサのスリップストリームに入ることに成功。
マッサはスタート直後の1コーナーでアロンソを抑えようとして、インによりすぎたため、スピードに乗るアロンソがアウトからかぶせて抜きにかかる。
アウトからかぶせるアロンソが先行していたが、マッサは譲らずにコーナーへ侵入し、接触。
アロンソはコースアウトするが、何とかマシンをコントロールし、4位でレースに復帰。
アロンソはライコネンのリタイヤもあり、地元スペインGPで表彰台には登ったが、レース自体は単調なレースとなった。
彼も認めているように、ライコネンがリタイヤしなければ、アロンソは4位だった可能性が高い。
逆にマッサが1コーナーでブレーキを踏んで、アロンソが先行していればアロンソが優勝していただろう。
マッサは幸運だった。
もし、最初の接触で、彼のフロントウィングがとんでいたら、彼の評判はまた地に落ちたことだろう。
逆に言うと、そこまでリスクを冒さなければ勝てないほど、フェラーリとマクレーレンは接戦だと言うことだ。
今年のレースはスタートで勝負が決まっている。
つまり、今年のマシンは前にマシンが走っている状況では、気流が乱れてダウンフォースの増減が激しく、走りづらいのだ。
また、タイヤの構造が昨年とは大幅に変わったので、タイヤのパフォーマンスが実際に決勝レースを走るまで、わかりづらいのも各チームを悩ませている。
それに、ハードとソフトの両方を使用しなければならないレギュレーションも、チームを困らせている。
今回は、スティントの終盤になってもタイヤの摩耗が厳しくタイムが上がりにくかった。
その為、スティントを延ばして逆転するという作戦が有効に働かず、結果的にはマッサの先行逃げ切り作戦が正解だった。
特にフェラーリは前にマシンが走っていると、挙動がナーバスになるようなので、マッサのポールポジションは狙い通りの良い走りだった。
ここまであまり評判の良くないマッサだが、次のモナコでも勝てれば、本物と誰もが認めることだろう。
次のモナコは誰もが認めるドバイバーズ・サーキットだから。
フェラーリとマクレーレンの差はかなり縮まっては来ているが、まだフェラーリはほんの少しアドバンテージがあるようだ。
だが、ライコネンのリタイヤを見ていると信頼戦はマクレーレンに分がある。
注目のハミルトンは今回も2位。
もはや当然のごとく表彰台に乗っているが彼は4戦目のルーキーで、この結果彼はポイントリーダーとなった。
2戦連続でアロンソより、上位でフィニッシュ。
残りは勝つことしかない。
まさか、モンテカルロで勝つとは思えないが、そうなっても誰も驚かないだろう。
それほど、彼の走りは安定している。
▽老兵は死なず
デビット・クルサードは前戦で激走を見せながら、惜しくもリタイヤとなったが、スペインGPではきっちりと5位入賞。
ミハエル・シューマッハーから最年長ドライバーの称号をありがたく、受け継いだこのベテラン。
予選でこそウェバーの後塵を拝することが多いが、決勝レースでは負けていない。
レッドブルのマシンも開幕前から長足の進歩を遂げてきた。
ルノーも調子を取り戻してきたので、コンストラクター4位争いも激しくなりそうだ。
- フェラーリの憂鬱
- 鈴木亜久里の志 その二