BARホンダ失格の真相 その1
ずっと謎だったんです。
BARホンダの失格&出場禁止の理由が。
どこを見ても本当の理由が書いてないんですよね。
だから今回は、ここまで明らかになった事実を元にまとめてみました。
できるだけ事実に忠実に書くつもりですが、なにぶんはっきりしない部分も多いので間違った部分などあるかもしれませんが、ご了承下さい。
このコラムではBARが発表しているこの事件の顛末と技術的解説が書かれている資料を参考にしました。
資料は下記のアドレスから誰でもダウンロード可能です。
104ページに上る膨大な資料が英語で書かれているので、時間と勇気のある方は是非ご覧下さい(^^)。
でもBARホンダ側が出した証拠の中には、レース中の燃料消費量や重量の推移表などもあり、こんな資料を公にして良いのと思われるモノもありました。
それほどこの処分が悔しかったのでしょうね。
このF-1 HyperNews でも既報の通り、サンマリノGPで今期初入賞をはたしたBARホンダ二台は失格処分になった。
BARのマシンには二つタンクがあり、その二つめのタンクから燃料を抜いたら最低重量を下まわったと報道された。
では、まず時計の針をサンマリノGP終了直後まで戻してみよう。
▽サンマリノGP終了後、何が起こったのか?
サンマリノGP終了後、通常のGP時と同じようにパルクフェルメに入った各マシンはレギュレーションに合致しているか調べられた。
事件はここで起こった。
検査員がBARホンダにバトンのマシンから燃料を抜き取るように指示。
BARホンダのメカニックは燃料を抽出しました。
この時、計測すると最低重量を上回っており本来であれば、ここで問題は起こらないはずでした。
ところがその後、検査員自身がポンプで燃料を抽出後、車体重量を計測し直すと、バトンのマシンは最低重量をクリアできていませんでした。
ここでBARホンダの燃料タンクの構造を見てみましょう。
タンクの構造図は前述のBAR資料の24ページに掲載されています。
BARの燃料タンクはメインのタンクの他にコレクターと呼ばれる燃料タンクを持っています。
これはエンジンに燃料を供給する際に、50気圧程度まで加圧して供給するため、最低限この燃料がなければエンジンが正常に動作しないために積んでいるとホンダは主張しています。
要するにこの燃料はレース中には絶対使わないのだから、これは車体重量の一部としてカウントしろという主張ですね。
実はサンマリノGPの検査員は当初、重量不足を指摘したものの、このBARホンダの主張を取り入れBARホンダの入賞を認めた最終結果を確定しました。
BARホンダが提示した資料に、レース中のマシンの重量推移図が掲載されています。
これによるとレース中は600kgをクリアしています。
ところが翌日になり、FIAがこの結果は認められんとFIAの国際控訴裁判所へBARホンダを訴えたのです。
そして5月4日に審理が開かれ、翌5日にBARのサンマリノGP失格&2戦出場禁止処分が出されました。
ここでいろいろな疑問が浮かび上がってきます。
少しまとめてみましょう。
▽浮かんでは消えていく疑惑点
この時点で私が感じた疑問点は下記の四点でした。
1.燃料タンクの構造は合法なのか?
2.BARホンダは審査員をごまかそうとしたのか?
3.BARホンダのマシンはサンマリノGPで走行中に最低重量を下回っていないのか?
4.コレクタータンクの燃料はバラストとして使われなかったのか?
では一つずつ見ていきましょう。
1.燃料タンクの構造は合法なのか?
燃料タンクの構造はマレーシアGPで調べられており、この時は合法とされているそうです。
実は他にも類似の構造を持つマシンが何台かあったと伝えられています。
(噂ではルノー、マクラーレン、トヨタなどです)
BARはこれが理由で失格になったわけではなさそうです。
2.BARホンダは検査員をごまかそうとしたのか?
続く疑問点はBARホンダは検査員をごまかそうとしたのかという点です。
BARのメカニックは通常の車体を傾ける方法で燃料を抜きました。
一方、検査員はポンプを使って、全部の燃料を抜き取りました。
実はこの方法で燃料を抜き取ることは年間で何回もないそうです。
通常は普通に燃料を抜いて、検査して終わりです。
ただし、この点は裁判の結果にはっきり「チームが故意に不正手段を取ったとは認められない」と明記されており、これが理由で失格となったわけでもなさそうです。
疑惑のコレクタータンクはBARのメカニックも存在を知らなかったようです。
3.BARホンダのマシンはサンマリノGPで走行中に最低重量を下回っていないのか?
では三番目の実際レース中はどうだったのよ、と言う点が問題になります。
F1の最低重量規定は乾燥重量で規定されていません。
(確か昔は乾燥重量で規定されていたと思います)
マシンの重さはドライバーも含めた重さとして規定されています。
予選中は605kg以下、それ以外は600kg以下であるように定められています。
レース終了後計測したところ、バトンのマシンは532.5kg、バトン自身の体重が73.6kg。
合計606.1kgでした。
レース後、よくドライバーがヘルメットを持った状態で台の上に乗り、何か調べている光景を覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
あれって、ドライバーの体重を計っているんですね。
で、審査員が燃料をポンプで抜き取り計測したところマシンは521kgでした。
要するにBAR側が燃料抜いたよ、といった状態から、さらに11.5kg燃料が出てきたと言うことです。
そうすると、あら大変512kg+73.6kgだと合計594.6kgとなり、レギュレーションを下回っています。
そこでBAR側はこの11.5kg中の6kg分がコレクタータンク内のモノであり、レース中のいかなる時点でも600kgを下回っていないと主張しました。
レース中のBARの重量推移図は先ほど、お話ししたBARが公開中の資料の中に含まれています。
それを見ると確かに600kgを下回っていません。
4.コレクタータンクの燃料はバラストとして使われなかったのか?
燃料をバラストとして使用することはレギュレーションで禁止されています。
今回の裁判でもこの点は違反していないことが確認されています。
ここで「あれっ」と思った読者の方も多いだろう。
なぜなら、タンクの構造が問題なく、誤魔化しもせず、車体重量もOKで、バラストとしても使われていないのであればなんで失格になるのと。
衝撃の真相は次回へつづく!
- ホンダの憂鬱とトヨタの本気
- BARホンダ失格の真相 その2