
カナダGPで独走態勢を築いていたハミルトンとロズベルグ。6連続1-2フィニッシュを目指していた彼らを悪夢が襲う。
彼ら二台はレース中盤にMGU-Kのコントロールシステムがオーバーヒートして問題が発生。MGU-Kでエネルギー回生ができなくなった。エネルギー回生ができないということは、モーターのブレーキ効果がなくなる。今年のマシンはMGU-Kの回生量が多くなり、その抵抗によるブレーキ効果の影響も大きくなった。その為、電子制御のブレーキバイワイヤーが導入され、リアのブレーキは昨年より小さい。
MGU-Kが故障すると、そのブレーキ効果がなくなり、機械式のブレーキだけに頼らざるを得ない。だがリアブレーキ自体は小さくなっているので、通常のペースではブレーキが厳しく、完走することは難しい。
こうしてハミルトンはリタイヤした。だがロズベルグはペースを落としながらも、レースをフィニッシュできた。ではどうしてハミルトンはリタイヤして、ロズベルグはリタイヤしなかったのか?2人の差はどこにあったのだろう?
ハミルトンはロズベルグの後ろを走っていて、空気が当たらないので、温度が厳しかったという意見もあるが、私はそう思わない。というのも2人のトラブルはほぼ同時期におこっているからである。
その原因はレース中、ハミルトンの方がブレーキバランスをリア寄りにしていたからではなかと推測される。実際、ロズベルグよりもハミルトンの方がブレーキバランスが後ろよりだったことが無線の記録から明らかになっている。ハミルトンはその為、リアブレーキを使用しすぎていたために、リタイヤに追い込まれたと考えることができる。
ハミルトンはピットインして空気で冷却できなくなったリアブレーキの温度が急激に上昇し、アウトラップでリアブレーキがきかなくなった。ロズベルグはハミルトンほどリアブレーキの温度が高くなかったので、止まってもそこまで致命的な温度上昇につながらなかった。
その後、ハミルトンがリタイヤしたこともロズベルグには幸運だった。それにより彼は2位でも3位でもハミルトンに対してポイント差を広げることができるからである。その為、思い切ってペースを落とすことができた。ニコにとって更に幸運なことに、同じくブレーキにトラブルを抱えながらもストレートスピードの速いペレスが2位を走り、ペースの速いリカルド、ベッテル、マッサを抑え込んでくれた。
その為、リアブレーキとMGU-Kにトラブルを抱えながらもニコは2位をキープできた。不運に見舞われたニコだが、少しの幸運もあったというお話である。