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日本企業とブランド価値 ブリヂストンの五輪スポンサー契約を考える

日本のブリヂストンがオリンピックのスポンサーになったと発表された。これでブリヂストンは2020年までの東京オリンピックを含む複数の大会にスポンサーとして名前を連ねる。現在、このオリンピックのスポンサーには、コカ・コーラなど世界的企業10社が契約しており、日本企業ではパナソニックの名前が見られる。 ブリヂストンは総額数百億円と見られる費用を使い、オリンピックのスポンサーになる。だがこれは正しいお金の使い方なのだろうか。 ブリヂストンが締結するとされる最高位の「TOPプログラム」というスポンサー契約は、1業種1社限定。五輪のシンボルマークを世界中で自社製品の広告や宣伝に使うことができるなど、五輪に関する独占的権利が与えられる。 だがこれでブリヂストンのブランド価値は上がるのであろうか?私は懐疑的に見ている。というのもブリヂストンとオリンピックはほとんど接点がない。ここに企業名を露出しても知名度が上がるかもしれないが、ブランド価値は上がらない。 世界的なブランド価値を持つ自動車会社にフェラーリがある。彼らは決して大企業ではないし、基本的に広告も出さない。それでも彼らのブランド価値は世界中の自動車メーカーの中では一番である。 彼らがすることはただF1でレースをするだけである。しかも常に勝っていたわけではない。70年代以降、彼らが輝いていたのは70年代後半のニキ・ラウダ時代と90年代から2000年代のシューマッハ時代のごく短い期間のみである。 それでもフェラーリのブランド価値は増え続けてきた。それは彼らがF1でのレース活動を続けてきたからである。ただそれだけである。だがこれがなかなか難しい。実際、多くの自動車メーカーがF1に参加したが、続けられる企業はほとんどない。 ブランドは何を言うかでは決まらない。何をするかで決まる。つまり言葉より行動である。フェラーリはその典型例である。広告は言葉を発信することはできるが、行動は発信できない。それではブランド価値が増えない。 フェラーリよりも速く、安全快適で、燃費も良く、安価なクルマは星の数ほどある。それでも人はフェラーリを欲する。フェラーリよりもブランド価値の高いクルマはない。それはそういう理由があるからである。 ブリヂストンは、2010年でF1へのタイヤ供給から撤退。2015年末にはMotoGPから撤退することが決定している。F1やMotoGPにタイヤ供給をしていれば、レースのある週末毎にブリヂストンの名前がメディアを飾る。自分達の広告ではない。メディアが彼らの行動を発信してくれる。その価値は計り知れない。しかもそれは自分達の商品と直結している。だからこそ人々はそのブランドに価値を感じるのである。 その繰り返しがブランド価値を上げる一つの方法である。日本の経営者は二言目にはブランド価値を上げたいと口にする。だがそれに成功した経営者は少ない。なぜなら彼ら自身がブランド名は知っていても、ブランド価値を知らないからである。いい商品を安い価格で提供しても、それはブランド価値とは無縁である。そこに気づかない限りブランド価値を上げることは難しい。

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