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モナコGP観戦記 part1 バトン独走の裏側

ブラウンGPの1-2フィニッシュ。 確かに彼らのマシンは素晴らしい。 多くのマシンがリアのスタビリティに苦しむ中、抜群の安定性を見せつけた。 だが、彼らの強さの秘訣はそれだけではない。 スペインGP同様、綿密に計画されたレース戦略が圧勝の背後にある。 モナコGPは、追い抜きがほぼ不可能なコースであり、予選順位が絶対的な意味を持つ。 勝ちを狙うならポール・ポジションが欲しい。 今回、その権利があったのはバトン、ライコネン、ベッテルの三人。 その中で、最もポール・ポジションを狙っていったドライバーは、ベッテルだった。 燃料搭載量は三人の中で最も少ない631.5Kg。 11周しか持たない燃料搭載量でポールを取りに来た。 だが、Q3最後のアタック中にラスカスで中嶋一貴に追いついてしまい、タイムをロスして四番手に沈んだ。 この時点で、彼の勝利の望みは潰えた。 次にポールを狙っていたのはライコネン。 ブラウンGPより少し軽くしたマシンをドライブするライコネンの走りは、素晴らしかった。 ここまでの鬱憤を晴らすかのような、切れた走り。 感動すら覚えるようなライコネン渾身のアタック。 しかし、彼の望みはわずか1000分の25秒差で絶たれた。 ほんのわずかの差でポールを取ったのは、バトンだった。 彼らはフェラーリとブラウンGPの性能によるタイム差を読み切り、若干重い燃料を搭載してきた。 その読みがずばり当たったバトンのポール・ポジション獲得だった。 万が一、ポールが取れなかったり、スタートでミスしてライコネンに前に出られても、1回目のピットで逆転できる万全の作戦。 どういう状況になろうとも、勝つ可能性が高い作戦を立案できる、ブラウンGPに今のところ死角がみられない。 これで、マシンも安定性抜群なのであるから、他のチームはお手上げである。 実際、レースはブラウンGPの二台がスタートで前に出た瞬間にほぼ決まりだった。 ライコネンの素晴らしい走りにより、2回目のピットインでバリチェロをかわせるチャンスはあったが、ピット作業に手間取り2秒ほどロス。 ブラウンGPの1-2を阻む最大のチャンスは潰えてしまった。 ▽ベッテルがポール・ポジションが欲しかった理由 ベッテルがポールを狙いに来たには理由がある。 彼らは過去二戦で、重い燃料で予選アタックをして予選2位を得たがスタートで失敗し、バトンに対抗できなかったからだ。 それにしても、ポールが欲しいのはわかるが11周目までしか走れない状態で、その後のレースはどうするつもりだったのか。 バトンより10周以上早くピットに入れば、最初のピットインで抜かれることは、明白である。 3ストップの選択肢も、抜けないモナコでは現実的ではない。 ポールからスタートし、軽い燃料とソフトタイヤで引き離すという考えはわからないでもないが、たかだか10周では稼げるタイムにも限界がある。 その後の10周で失うタイムの方が大きい。 もし、それくらいの搭載量の違いがなければ、ポールを取れないのであれば、最初からポールなどは狙わずに、常識的な燃料を搭載してアタックした方が良かっただろう。 そして、ポールが狙えるパフォーマンスがあるのであれば、少なくとも15周とか17周くらいの燃料を積むべきだっただろう。 ギリギリのタイム差でポールを取ったブラウンGPのバトンと軽すぎる燃料でポールが取れなかったレッドブルのベッテル。 マシンの性能では差を詰めてきたレッドブルであるが、作戦面ではブラウンGPとの差はまだまだ大きい。 ロス・ブラウンが持つ膨大な経験に追いつくのは、すぐには難しい。 そう考えると、今シーズンのチャンピオンシップは大きくブラウンGPに傾いたといえる。 それにしても、バトンのドライビングは素晴らしい。 確かにブラウンGPのマシンはいいし、レース戦略もよく練られている。 しかし、それもバトンのドライビングが、それを実現できるからこそである。 このモナコでも、ほとんど修正をしないハンドル操作と抜群のアクセルワーク。 第一スティントでスーパーソフトを履きながら正確なドライビングで、タイヤのタレを最小限に抑えてしまう。 速くてしかも正確なバトンのドライビングがなければ、彼の勝利はなかった。 それを考えると、彼のドライビングは既にチャンピオンクラスと言えるだろう。

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