ハミルトンはロズベルグを逆転できたか? タイヤ交換から見るイギリスGP
ニコ・ロズベルグのイギリスGPは今シーズン初のリタイヤに終わった。これによりハミルトンは逆転で優勝でき、29ポイントの大差をわずか4ポイントに縮めることに成功した。これはもちろん、ロズベルグがリタイヤしたからである。
ではハミルトンはロズベルグが完走していても優勝できたのだろうか?
レース前の予想では2ストップの方が速いと予想されていた。その場合、最初の2スティントをミディアムで走り、最後をハードで走るのが理想的であると予想されていた。金曜日フリー走行ではハードはミディアムより約0.6秒遅かった。
ウィリアムズのような予選を失敗したチームは、1ストップも検討していた。だが日曜日は金曜日より7度も気温が上昇。これではコンディションがあまりに違うので、金曜日のロングランデータが当てにならず、チームの作戦担当は頭を抱えることになる。
彼らはタイヤのタレが予想できずに、1ストップで最後までタイヤがもつか、タイムがどうなるかは不透明なままレースに臨むことになった。この条件の変化よりより柔軟に作戦を変更できるチームやドライバーが上位に来ることになった。
実際、優勝したハミルトンは6位から、2位のボッタスは14位から、3位のリカルドは8位グリッドからのスタートであった。
優勝候補筆頭の二人のメルセデスドライバーは共にミディアムタイヤを選択。赤旗中断でタイヤ交換が可能になると、タイヤを交換するドライバーも多く出る中、この二人はスタート時に選択したタイヤを交換しなかった。
ポールポジションからスタートし、トップを走るニコは、通常の2ストップを実行した。最初のタイヤ交換は18周目。この時、ミディアムに交換したロズベルグはハードタイヤを履く義務を完了していないので、2ストップが確定した。ここまでは予定通りである。この時点では1ストップ作戦が可能かどうか、まだ誰にもわからなかった。
ところが最大のライバルであるハミルトンは24周目まで最初のタイヤ交換を延ばした。しかも大きくタイムを失うことがなかった。ここまで引っ張ると1ストップは可能である。だがこの時点でもまだ1ストップが速いのかどうかは、まだわからない。だがハミルトンの作戦担当はここでハードタイヤに交換することを選択。
これが素晴らしい判断になった。これによりハードタイヤが最後までもたなければ、2ストップ作戦に切り替えればいいし、最後までもてば1ストップでいける。ライバルのロズベルグは既に2ストップ作戦が確定している。逆転は可能だ。もし2ストップになっても、状態のいいオプションでニコを攻めればいい。
さらにハミルトンを助けるチームが表れた。レッドブルは赤旗中断中にミディアムからハードに交換して、再スタート。ハミルトンはこのレッドブルのハードタイヤのラップタイムを見ながら、自分達の作戦を決められる幸運である。
実際にリカルドのハードのタイムはミディアムとほとんど差がなかった。ハミルトンは自信を持ってハードに履き替えた。彼のハードタイヤのタイムもミディアムとは変わらなかった。これならば行けるところまで行けばいい。ベルニュやグロージャンがハードタイヤに交換して再スタート。彼らが25周以上、ハードで走っていたので、ハミルトンの作戦担当は1ストップでいけると確信しただろう。レール後半は燃料が軽くなりよりタイヤに優しい条件でもある。
このままいけばハミルトンはロズベルグを逆転することが可能であった。もちろんロズベルグが第2スティントのミディアムを引っ張り、最後に新品のハードでハミルトンに襲いかかることも可能であった。だから最終順位がどうだったかは、「たら・れば」の話になるのであるが、もしロズベルグが最後まで走れていれば、とても興味深い二人のバトルが見られていたことになる。
最終的にハミルトンは、2ストップを選択した。だがこれはレース終盤にセーフティカーが登場した場合の保険である。今回、ハミルトンは1ストップをせず、ロズベルグがリタイヤしてしまったので、誰も驚かない結果になったが、ハミルトンの作戦担当は満足してシルバーストーンを後にしたことであろう。
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