2014 Rd.13 イタリアGP観戦記 直接対決なき静かなバトル
前回のベルギーGPで同士討ちをして倒れたメルセデスのハミルトンとロズベルグ。今回も二人の直接バトルに注目が集まったが、それは実現しなかった。
FP3で走れなかった影響もありロズベルグは予選から苦しんでいた。予選はハミルトンに0.28秒も遅れて2位。当然、ポールポジションはハミルトン。イタリアGPはポールポジションが優勝する確率が極めて高いサーキットであり、スタート前からハミルトンの楽勝ムードが漂っていた。だがレースは意外な展開を見せる。
なんとハミルトンがスタートで大失敗。これは彼のマシンのローンチモードが機能しなかったためである。ローンチモードとは、レースのスタートの時にだけ、使用するマシンの制御モードである。ゼロから発進するために、エンジンのトルクの出力を滑らかにしたり、クラッチやデフの制御を通常のレースモードとは違うようにしてある。フォーメーションラップでローンチモードが使用できないことに気がついたハミルトンは、スタート時にはうまく働くように願っていたが、彼のローンチモードは動作せず、珍しい大失敗のスタートになってしまった。それでも4位に落ちただけで済んだのだから、幸運だったとも言える。
しかも蹴り出しが悪く加速しないにも関わらず、ロズベルグを抑えようとハンドルを右に切ったのだから、タイヤの抵抗でさらに加速が鈍る悪循環。ロズベルグだけでなくマッサとマグヌッセンにも先行される苦しい展開となった。マグヌッセンは早々にかわしたハミルトンだったが、マッサを抜くのは容易ではない。元々この高速サーキットでウィリアムズは速いと予想されていたが、最高速の速いウィリアムズのマッサを抜くのは、メルセデスのハミルトンでも簡単ではなかった。
この間にロズベルグは差を広げ一時は6秒近くのギャップができ、ロズベルグが逃げ切り体制に入るのかと思われたが、彼にも思わぬ落とし穴が待っていた。ロズベルグは9周目の1コーナーのブレーキングでミスをして直進。約2秒を失った。そして更にハミルトンがマッサを抜いて、ロズベルグを追いかけ、二人の直接対決間近の29周目でロズベルグは再び1コーナーのブレーキングでミス。そのまま直進し、直後にいたハミルトンにあっさりと先行を許した。
ロズベルグが2度も同じ1コーナーのブレーキングでミスをして、ハミルトンを先行させたことに対して、直接対決を避けるための陰謀ではないかと噂されているが、それはない。
確かに同じ場所で同じミスを2回するのは珍しい。だがモンツァの1コーナーのブレーキングは、350km/hから70km/hまで急減速する。ほんの一瞬ブレーキングのポイントが遅れただけで、曲がれなくなってしまう。とても微妙で繊細な作業である。
ロズベルグは止まろうと思えば止まって曲がれたと思う。だが強くブレーキングして、タイヤをロックさせてフラットスポットを作るのは得策ではない。事実、前回のベルギーでロズベルグはタイヤをロックさせて、フラットスポットを作り、タイヤ交換の数が増えている。
それにレースペースを見るとロズベルグはハミルトンに比べてマシンのセットアップに苦しんでいた。モンツァではほんの少しセットアップの差が明暗を分ける。なぜならモンツァのセットアップは常にドラッグを減らす方向で、セットアップの幅が極めて少ないからである。
つまりロズベルグは抜かれることよりも、タイヤを労ることを優先させたのである。ハミルトンが1位でもロズベルグが2位ならば、二人のポイント差は7ポイントしか縮まらない。ロズベルグにとっては悪くない結果である。
ロズベルグがミスをしなくても、今回のハミルトンの速さは群を抜いており、比較的追い抜きができやすいモンツァでハミルトンをレース最後まで抑える事は難しかっただろう。それにロズベルグが二度も同じミスをすると言うことは、マシンのセットアップが決まっていなかったわけで、無理をしてタイヤ交換を1回増やして3位になるリスクを避けるのは賢明なやり方である。
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