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2012年 Rd.2 マレーシアGP観戦記 <BR>ー不可能を可能にする男ー

 ▽不可能を可能にする男 フェルナンド・アロンソ
今回、コンディションが味方したことは間違いのない事実で、ドライコンディションであれば、アロンソが勝つことは100%なかった。しかし雨だからといって、誰でも勝てるというものでもない。

正直に言うと今のフェラーリのマシンでは雨が降ろうが、雪が降ろうが勝てない。これが現実である。恐らく今回のアロンソとマッサの中間くらいが実力値だろう。今回アロンソはセクタータイムでもトップスピードでも何一つ1位になった記録はない。それでもこの結果である。

このコンディションで勝てずに表彰台だとしても、アロンソは褒め称えられたに違いない。だが彼は勝ってしまった。
アロンソの熱狂的ファンでもこの結果は予想できなかったはずだ。
彼自身、このレースを勝てるとは思っていなかったと正直に話している。

彼の勝因はいくつかある。
 まずSC後のレインからインターミディエイトに変えるタイミングがよかった。これで1周遅くタイヤ交換したペレスに対して5秒程度のマージンを得られた。これは後々大きなマージンとなる。
この後、アロンソは一時的にペレスとの差を広げるが、徐々にペレスのペースが上がって、1周1秒以上速く、瞬く間に追いついてくる。
そして今まさに追いつこうとするタイミングでアロンソはドライのミディアムに交換した。

アロンソはここでもペレスより1周早くタイヤを交換して5秒ほどの差をつけた。そして再びアロンソはペレスに追い上げられて、1秒差以内のDRS圏内に追いつかれるが、ペレスがターン14でミスをして再び両者の差は5秒に広がり勝負はあった。

ではアロンソはペレスのミスがなければ勝てなかっただろうか。
私はペレスのミスがなくても、アロンソは勝っていたと思う。
彼はペレスに追い上げられながらも、焦らずミスのないドライビングを続け、タイヤを痛めることがなかった。だから、ペレスに追いつかれた場面でも素晴らしいトラクションを見せていた。

この為、アロンソがミスをしない限りペレスがストレートで抜くことはできなかったと思う。
ではコーナーで抜けるかというと、レース終盤でもレコードライン以外は少し濡れており、コーナーでラインを外すのはかなりのリスクがあり、難しかっただろう。

よってペレスのミスがなくてもアロンソは勝っていたというのが私の結論である。

さらにペレスがミスをした後のアロンソは自己ベストタイムを更新し続けた。つまりアロンソは絶体絶命になりながらも、ポケットにマージンを残していたことになる。

やはりフェルナンド・アロンソが現役№1ドライバーであるのは間違いない。
そう確信させられた日曜日の午後であった。


▽素晴らしい結果ではあるが、勝てなかった……。
ペレスの走りは素晴らしかった。目まぐるしく変わるコンディションの中、速く走るのはとても難しい。だが彼は勝てなかった。これは彼にだけ責任があるというわけではない。だが彼にもその責任の一端はある。

まずペレスが躍進したのはオープニングラップ修了後、いち早くインターミディエイトからレインに交換したのが大きな理由である。これにより彼は3位に順位 を上げ、SC後は2位にまで順位を上げる。いつもは保守的なザウバーであるが、これは素晴らしい決断で大きな見返りがあった。

そしてSC後、彼はインターミディエイトタイヤに交換するのだが、このタイミングがアロンソより1周遅く、これで5秒ほどロスしてしまう。ドライタイヤに 交換するタイミングもアロンソより1周遅かった。これでやはり5秒ほどロスしてしまう。ちなみにタイヤ交換作業の時間でもペレスはアロンソより合計4秒を ロスしている。もしこのロスがなければ、ペレスはもう少し余裕を持ってアロンソにチャレンジで
きていた。最初の判断はよかったのだが、最後はいつもの保守的なザウバーに逆戻りとなった。

ただこれはある意味仕方のない決断とも言える。
ペレスには2位という大きなチャンスを手にしかかっており、これを逃すリスクを冒すことは難しかった。チームからペレスには「慎重に行け、我々には結果が 必要だ」という内容の無線指示が出ていた。これはチームがコンストラクターズの順位を考えると、18ポイントいう大量得点を逃せないことを意味している。

2位18ポイントが目の前にぶら下がっており、これを何とか維持したいと考えていたとしても彼らを責められない。だがこれこそが中堅チームとトップチームの違いである。彼らの間にはもちろん資金量の違いという現実的な大きな差は存在する。
しかし両者の最も大きな差は、勝つことにかける執念の差でもある。

今回ペレスも最初のピットストップでは勝負をかけた。何も失うものはないからだ。
ところが2回目、3回目では保守的にアロンソの後でピットインすることを選択した。
もしどちらかでもアロンソより前にタイヤ交換していれば、結果は違っていたかもしれない。これが勝利に対する意識の差といえる。勝てなければ2位も3位も 敗者であるという哲学こそが、上位チームと中堅チームの決定的な差である。ロン・デニスは優勝したとしても1-2フィニッシュでなければ完全には満足しな かったという。
そういう考え方があるからこそ、彼らは常に上位を争うことができる。

残念ながら今のザウバーにはそれが決定的に欠けている。だから上を目指すドライバーはこのチームに長くとどまるべきではない。それがこの日の素晴らしい結果の裏にある悲しいけれど現実的な結論である。

▽悔しい可夢偉
残念ながら今回、可夢偉は不運であった。
彼はサスペンションに問題あり、予選Q2で脱落し17位からのスタートとなる。そしてレースでもペレスは1周目にレインに交換してジャンプアップにしたの と好対照に5周目まで引っ張ってしまって、上位進出の望みを失う。それでもレース中はセクターベストタイムを出すなど、健闘していたのだが、最後はブレー キトラブルでピットへ戻らざるを得ず、彼のレースは終わった。
チームメイトのペレスが今回、2位という結果を残したことで、悔しい思いをしているとは思うが、今回はこれをバネにして次回以降頑張って欲しい。

実際、ザウバーのマシンはかなりいい。
ペレスはレース終盤に、S2で全体のベストタイムを連続して更新し続けていた。このサーキットのS2は高速コーナーが多い区間で、昨年であればレッドブル が得意としていた区間である。この区間でベストタイムが出せると言うことは、空力的に優れていることの証拠である。さらに彼らのマシンはタイヤに優しいと いうことも、オーストラリアGPでペレスが1ストップ作戦を成功させたことでもわかる。

次は可夢偉の番だと信じて、今回の観戦記を終わりにしたい。

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