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2012 Rd3 中国GP観戦記 <br>-ニコのにこにこ初勝利-

▽ニコ 111戦目の初優勝
ニコ・ロズベルグがついに勝った。
F1参戦から7年目、111戦での初勝利である。これは2009年にマーク・ウェバーが勝って以来の初優勝となる。

実は彼は過去に二回勝てるチャンスがあった。
2008年のシンガポールGPと2010年の中国GPである。
ともに自分自身のミスで勝利を逃した彼は勝てない時期が続いたが、ついに初優勝を手にした。

では彼はどうして勝つことができたのだろう。
それには複数の要因が絡まっている。

第一の理由は、このサーキットが制限がない場合(つまり予選では)、DRSを使用できるエリアが50%以上あることが大きい。メルセデスが今年投入したWダクトの効果は著しく、メルセデスは過去の二回の予選でも二列目にマシンを送り込んできた。このサーキットではその武器を遺憾なく発揮することができ、予選で1位と2位と独占。フロントロウからスタートできたことは勝利の大きな要因となった。
そしてニコのスタートが素晴らしくトップで1コーナーに飛び込めたのが二番目の理由だ。昨年からそうであるが、ピレリタイヤはクリーンなエアの中を走れるとタイヤが良い状態を保てる。
昨年のベッテルがそれほど差がないマシンでも圧勝できたのは、ポールポジションといいスタートがあったことは、間違いがない。

過去二戦でメルセデスは決勝でのタイヤの摩耗が激しく、常に早めのタイヤ交換を強いられ、苦しいタイヤ交換を強いられた。
実際、2位を走っていたミハエルは通常通りのタイヤの摩耗状況であり、タイムの落ちも通常通りであった。
だからこのレースをもってメルセデスのタイヤの摩耗がライバルに比べて改善されたとは言い切れないと思う。その判断は次のレースまで持ち越しとしたい。

そして最後はこれが最も大きな理由であるが、ニコ・ロズベルグ自身のドライビングが素晴らしかった。特に予選のアタックはほぼ完璧とも言える出来であっ た。彼のQ3のアタックは殆ど修正がなかった。これは彼のステアリングとアクセルワーク、そしてブレーキングがほぼ完璧にシンクロしていたことの証明であ る。

これは口で言うほど簡単ではない。なによりQ3は全員が全力でアタックしている。攻めないとタイムは出ないし、攻めすぎるとタイムを失う。700馬力を超 えるF1マシンを完全にコントロールすることは天才揃いのF1ドライバーといえども難しい。でもニコはそれを成し遂げた。

今年のF1は競争が非常に厳しい。
Q1では1位から17位までが1秒以内に、Q2では1位から15位までが1秒以内の差である。Q3も2位から9位までが1秒以内である。
それほど競争が激しいにも関わらず、ニコは2位のシューマッハーに対して0.5秒の大差を付けている。これは彼がいかにミスなく限界で攻めきったのかという表れである。

Q3アタック時のニコのドライビングはとてもリラックスしていて、無駄がなく、まったくミスがない。このドライビングは1年で1回見られるかどうかというほど素晴らしいものである。
普通、攻めると全ての動作が激しくなるのが普通である。ところが彼のドライビングを見ると力んだところがまったくない。全盛期のプロストを思わせるほどスムーズなドライビングであった。
決勝でもここまで完璧には無理にしても、これに近い走りができればタイヤの摩耗を最小限度に抑えることが可能である。実際、彼は各スティントでもう数ラップできるほどタイヤの状態は良かった。

つまり今回の勝利はニコ・ロズベルグ自身の能力を余すことなく発揮した結果であった。おめでとうニコ。

▽バトンは二回ストップで行けたか?
マクラーレンは今回3回ストップを選択した。さて彼らは2回ストップで行けなかったのだろうか。結論から言えば2回でも大丈夫だっただろう。彼らが3回ス トップを選択したのはウェバーが6周目にタイヤ交換して、良いタイムを記録したので、それに反応したのだろう。メルセデスは3回ストップするだろうという 予測もあったのではないか。何しろタイヤに厳しいメルセデスなのだから。

ところがニコは2回ストップで余裕の逃げ切りであった。
ニコとジェンソンのレース後の差は約20秒。これはほぼタイヤ交換一回分の差である。もちろんニコは最後ペースを落としていたし、ジェンソンが最後のス トップで6秒失わなければフレッシュなタイヤでクリーンなエリアに出て、追いかけられたので、もっと激しくプレッシャーをかかることはできた。

ただニコのタイヤの状態は良かったので、バトンが2回ストップでも最後のタイヤ交換でタイムロスをしていなくても、ニコの勝利は動かなかったとは思う。もちろんバトンサイドのミスがなければ、ニコにも初優勝のプレッシャーがかかっていたと思うが。

レース前はかなりタイヤが厳しいと思われていたが、実際のレースでは予想以上にタイヤをもたせることができた。これはトップを走るメルセデスのニコには有利に働いた。そして路面温度がそれほど高くならなかったのも、メルセデスには良かった。

つまり中国GPはニコの日だったということだ。

▽可夢偉 悔しい10位
小林可夢偉は予選で4位を獲得。ハミルトンのペナルティで3位からのスタートとなり大きな期待がかかった。だがスタートで失敗し、大きく遅れた彼は3回ストップを選択し、なんとか10位に滑り込んだ。

今回の結果だけを見れば、スタートでの失敗が全てである。
もしスタート直後に2位か3位を走ることができていれば、結果はまったく違っていただろう。
レース後の3位ハミルトンから10位可夢偉までの差はわずかに13秒。これは各車の平均の差がたったの1.6秒ということである。これだけ僅差の戦いでは、スタートのミスは致命的とも言え、全てはここで終わった。

だがスタートは可夢偉だけのミスではない。
今のF1のスタートにおいてドライバーは決められ設定をし、決められた回転数でクラッチパドルを戻すだけである。もちろんパドルを戻すタイミングはドライ バーの反応次第だし、クラッチをつないだ後はドライバーの能力でアクセルをコントロールするのだが、今回のスタートの失敗は車載カメラを見る限り、クラッ チをミートした瞬間にエンジンの回転数が落ちている。
これは予想していたよりも路面がグリップしタイヤの抵抗が大きかったので、エンジン回転数が落ちたことを示している。つまりエンジニアの判断ミスの可能性が高い。

最もクラッチのミートポイントをどこへ設定するかというのは常に難しい問題である。カーボンクラッチの適切なミートポイントというのは、温度だけはなく湿 度にも影響される微妙な設定である。とはいえこういう細かい部分にトップチームと中堅チームの差が現れる。つまりエンジニアのクオリティが違うのだ。

それにしても失うものが大きかったスタートの失敗であった。

ちなみに彼が3ストップを選択したのは、予選でフラットスポットを作ったタイヤでスタートしなければいけなかったので、早めに1回目のストップをしたかったからである。
 

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