先日、小さな記事が掲載されていた。それは長年マクラーレンのパートナーだったTAGホイヤーがマクラーレンとの契約を終了するという記事である。
それは成績面で苦しむマクラーレンからまたひとつスポンサーが離れるという文脈で語られていた。だがこれにはもう一つの側面がある。
というのもマクラーレンの株は中東の機関投資家、ロン・デニスとマンスール・オジェという人物が持っている。このマンスール・オジェはTAGホイヤーの親会社であるTAGのトップである。
ウィリアムズのスポンサーとしてF1に参加したTAGだが、その後マクラーレンとパートナーシップを結び、ポルシェ製のターボエンジンにTAGの名前をつけて一時代を築いたことは有名である。
その後、ロン・デニスとオジェは蜜月関係にあったが、マクラーレンの市販車プログラムが不調になると、関係が悪化した。デニスはオジェの持つ株式を買い戻そうとするが、資金的にも関係悪化の影響もあり実現していなかった。
そこにTAGホイヤー離脱のニュースである。現在、TAGホイヤーの大株主はルイビトングループであり、オジェがどれほどの株式を保有しているかは不明である。
TAGホイヤーがマクラーレンを離れるのにオジェが株主として残るという選択肢があるとは思えない。つまりオジェはマクラーレンとロン・デニスとの縁を切ろうとしていると解釈できる。
ではオジェが株を売る相手は誰だろうか。これだけどん底のマクラーレンの株を買うのは勇気のいることである。ロン・デニスは新たな株主を見つけるために交渉を続けているが、まだ合意にはいたっていない。
特に中国の投資家と話をするためにデニスは、最近レース現場に来ない時もある。
では新しい株主の名前としてホンダの可能性はあるのだろうか。ホンダであれば、マクラーレンが不調の今でも株を買えるし、資金力的には全く問題がない。
だがホンダは第三期F1活動時代、当初BARへのエンジン供給という形態で活動を再開。その後BARの株を買い、最終的には全ての株式を購入してホンダF1チームとして活動。成績が残せずに撤退し、その翌年ブラウンGPの名前でチャンピオンになり、メルセデスに買収され、今や最強の存在となるという苦い過去を持っているので、この時点で株主になるという選択肢はないだろう。
もちろんマクラーレンとBARとはチーム力が違う。だが今のマクラーレンは過去のマクラーレンと違うのも事実である。
マクラーレンにはホンダのPU以外にも問題が山積しているようである。