ここ数年、毎年繰り返されているのがチームの経営問題である。新規参入してきたHRTとケータハムが撤退した。マノーも撤退寸前から奇跡的な復活を遂げた。ロータスも破綻寸前の状況からルノーの買収というウルトラCで救われた。
さらに参戦年月の長いザウバーやフォースインディアの経営危機はいまだ解決されていない。マクラーレンにはここ数年メインスポンサーもない状況である。
今年ハースが新規参入してくるが、それでもF1をめぐる経済状況は芳しくない。
この状況は今後、改善されてくるのであろうか。
結論から言うとこの問題は根が深く、解決は容易ではない。リーマンショックで世界経済低迷の影響を受けていたと言われていたF1であるが、最近世界経済が持ち直してもF1に回ってくるお金は変化が見られない。
これには大きく二つの問題がある。それがF1チームの運営費が高すぎると言うことである。1960年代あたりはチームの運営費は年間数億円も珍しくはなかった。この頃はスポット参戦も当たり前だったので、ヨーロッパのトラック移動ができるレースにだけ参加するチームも多かった。
この金額であれば個人の資産家がポケットマネーを出しても運営が可能である。当初のF1もそういう形態で運営されていた。
だがいまやチームの年間予算は最低100億円という時代である。これはあまりも巨額で、優勝を争うとなると最低300億円が必要となる。
こんなスポンサーマネーを出せる企業は世界的なビジネスをしているほんの一握りの会社に限られる。だがそういう企業はオリンピックやサッカーのワールドカップにも投資をしているので、F1に回すお金がない。
しかもF1は毎年開催されるというメリットはあるものの、危険でリスクがある。これはタバコやエナジードリンクメーカーなどの商品にはちょうどいいイメージだが、他の商品には似合わない場合も多い。
そうなるとF1に巨額の資金を投入しないというのも当然である。
そして、もう一つの問題が分配金問題である。F1が興業として受け取る金額の約半分くらいしかチームに分配されていない。その他の半分はF1を取り仕切るバーニー・エクレストン率いるFOMが手にしている。
これはあまりにも高い比率である。悪名高い競馬の還元率が75%であることを考えると、これはあまりにも高い。さらにいうと宝くじの還元率が約50%である。経済的に考えると絶対に元が取れないといわれる宝くじと同じ還元率がF1なのである。
もちろん現在のF1の隆盛を作り出したのは、確かにバーニーの成果ではある。だがこれはあまりにも低い還元率である。
巨額の投資をしてマシンを開発し、レースに参加しているのはチームなのである。その彼らが半分しか受け取れないのはあまりにも厳しい。
サーキットの改修などはサーキット側が投資するので、FOMは極めて低い投資額で巨額のお金を稼いでいることになる。
もしこれを90%くらいの還元率にすれば、F1チームの経営環境は劇的に改善するだろう。
だがそれも難しい。現在FOMを統括する会社には投資会社の資金が投入されており、近いうちに株式公開を目指していると言われている。だが一度、株式を公開すると利益を上げ続けなければならないので分配金を増やすと言うことができなくなる。
そもそも大きな投資を必要としないFOMが株式を公開すること自体が疑問である。これは投資会社が投資したお金を回収しようとしているだけである。もちろん投資会社は投資したお金を回収するのが仕事なので、これ自体にはなにも問題はない。
だがF1というスポーツとして正しい方向に向かっているとは思えない。
しかもトップチームはスポンサーも潤沢でお金にあまり困っていない。だからF1は総論賛成で各論反対の状況になり、改善されていない。
今年も中小チームの悲鳴が聞こえてきそうである。