フェラーリ スタートの秘密
今シーズン、メルセデスがスタートに苦しむ一方、フェラーリは比較的いいスタートを決めている。その理由のひとつは彼らのクラッチ・パドルにあった。
スタートで使用するクラッチの仕様が変更されたことは、たびたびお伝えしている。昨年までクラッチ・パドルは二枚使用でき、ドライバーがすることは点灯しているライトが消えたら、一枚のパドルを離すことだけであった。
だが今年からクラッチ・パドルは一枚に制限された。物理的なクラッチ・パドルは二枚あってもいいのだが、機能的には同じでなければならない。
そのため、ドライバーは自分の指で最適なクラッチのバイトポイントを探り、見つけなければならない。そのため、今年のスタートでは何回も波乱が起こった。
この複雑になった手動クラッチでのスタートをうまくするために、フェラーリが採用した方法が興味深い。
ライバルチームはクラッチ・パドルが一枚に制限された今年も、昨年同様二枚のクラッチ・パドルを採用している。だがフェラーリはクラッチ・パドルを一枚にしてきた。だが彼らは単純にパドルを一枚にしたわけではなかった。
http://www.formula1.com/content/fom-website/en/latest/technical/2016/5/analysis—ferrari-wishbone-clutch–mercedes-steering-wheel-sett.html
この図を見てもらうとわかるように、フェラーリのパドルはその端でステアリングホイールと連結されている。通常のクラッチ・パドルはステアリングの中央付近で接続されているのが通常である。
(左図の大きな赤矢印) 昨年のフェラーリのクラッチパドル (右図の大きな赤矢印)今年のフェラーリのクラッチパドル
http://www.formula1.com/content/fom-website/en/latest/technical/2016/3/analysis—the-single-clutch-race-start-returns.html
この方式でフェラーリは何をしようとしているのであろうか?
ステアリング中央付近でステアリングとつなぐと当然だが、パドルの長さは短くなる。パドルの長さが短くなると、少しパドルを動かすだけで、大きな動きがクラッチ・パドルに伝わり、間違えたときに失敗する可能性が大きくなる。
フェラーリのように、クラッチ・パドルの端でステアリングとつなぐと、クラッチ・パドルの長さを長く取ることができる。ステアリングの中央部分でつなるより、倍以上の長さを確保できる。
そうするとより少ない力でパドルを動かすことができ、クラッチ・パドルをより繊細に動かすことができ、最適なクラッチのバイトポイントを見つけやすくなるし、もし多少間違えた位置でクラッチをつないだとしても、許容範囲が広くなり、完全な失敗スタートを防ぐことができる。
このクラッチ・パドルがフェラーリのスタートがいい理由の一端であることは間違いない。
これは小学生の授業で習う、てこの原理の応用である。これほど簡単な原理であるが、それをこのようなクラッチ・パドルに応用することを考えることは、なかなかできることではない。
これを考え出した人は頭が良いと唸らざるを得ない。
今後のこの方式は他のチームも模倣して、F1のスタンダードになっていくだろう。
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