このレースでもっとも激しいバトルのひとつがフェルスタッペンとライコネンの5位を争いだったのは間違いないだろう。
だがライコネンがターン2入り口で仕掛けた時のフェルスタッペンの動きには問題があった。
このハンガロリンクは特殊なDRSゾーンを持っている。通常ふたつDRSゾーンがあればふたつの検知ポイントがある。だがこのハンガロリンクは一つの検知ポイントにふたつのDRSゾーンが設けられている。
最終コーナー手前で1秒以内か検知し、ホームストレートと1コーナーから2コーナーに向かうショートストレートの2箇所がDRSゾーンに指定されている。
ライコネンは検知ポイントで1秒以内に入り、ホームストレートで差を縮め2コーナーの飛び込みでアウトから仕掛けた。
この時フェルスタッペンはアウトへマシンをふりライコネンをブロック、ライコネンはすかさずイン側にマシンを向けるが、それに反応したフェルスタッペンもイン側に寄せる。
結果的にライコネンはフロントウィングのパーツを飛ばし、その後のアタックが難しくなった。
今のF1ではブロックする為にコース変更できるのは一回だけである。それを考えるとフェルスタッペンのこの動きはルール違反でペナルティーを与えられてもおかしくはなかった。
だがルール違反以上にフェルスタッペンの動きは危険だった。ライコネンは2回のDRSを使ってフェルスタッペンより速い速度でターン2に向かっていた。ライコネンはアウトから抜こうとしたが、フェルスタッペンがこれをブロック。コースをふさがれたライコネンはイン側にマシンを向けるがフェルスタッペンがイン側にマシンを向けたので接触した。
スペインGPでのハミルトンの動きがアグレッシブすぎると批判されたが、速度差のあるマシンに接近した場合、後ろのマシンはあいた空間のあるラインに動かないとぶつかってしまう。
スペインGPでのハミルトンの動きをアグレッシブなら、もしハミルトンがそのままコース変更しなければ、彼はロズベルグにぶつかっていたのは間違いない。
クルマを運転した経験のある方はわかると思うが、前のクルマが急減速したら接触を避けるためにハンドルを切るのは当たり前の反応である。
今回のライコネンも速度差のあるフェルスタッペンを抜きにかかっているわけで、彼がラインを変えなければ、そのままフェルスタッペンにぶつかっていた。それを避けるためにコース変更をしたが、フェルスタッペンはさらにもう一度コース変更したわけで、これで接触しないわけはない。
今回はライコネンのフロントウィングのパーツが飛んだだけだったが、フェルスタッペンのリアタイヤがパンクしていてもおかしくはなかったし、そうなれば彼は5位の座も失っていたわけで、決してほめられた動きではなかった。
それにフェルスタッペンの動きが許されるならF1でのオーバーテイクは激減することになる。そんなことを望んでいるファンもドライバーもいないだろう。
スペインGPではライコネンのアタックを正々堂々とミスなく防いでいただけに残念なドライビングだった。