久しぶりにハミルトンが快勝した。彼の勝利は7月のドイツにまでさかのぼる。約1ヶ月の夏休みを挟んだとはいえ約三カ月ぶりの優勝である。
だがその優勝の喜びも半分位というのが本音であろう。それは最大のライバルであるロズベルグが2位になったからである。
ハミルトンからすれば自分は優勝して、ロズベルグは3位というのが望みだった。だがアクシデントがその希望を打ち砕いた。
スタート直後のターン1でインをおさえたハミルトンに対してアウトから仕掛けたロズベルグだが前のハミルトンに道をふさがれ、イン側から飛び込んだリカルドに先行を許す厳しいレースとなった。
ただリカルドはスーパーソフトで、ロズベルグはソフトタイヤスタートだったのが唯一の望みだったが、ソフトを履いたリカルドは8周でソフトにタイヤ交換。だがロズベルグを2周遅れでミディアムに交換。たったの2周しかタイヤ交換時期が違わずリカルドを抜くことはできなかった。
この時メルセデスは対レッドブルを考えてハミルトンとロズベルグのタイヤ選択を変えてきた。ハミルトンはソフトからソフトに、ロズベルグはソフトからミディアムに交換。
スタートでフェルスタッペンが出遅れたレッドブルはリカルド一台で2台のメルセデスに対抗せざるをえず苦しい展開となった。
本来レッドブルこそが、予選Q2で2人のタイヤを分けてアタックさせ、フェルスタッペンはソフトタイヤスタート、リカルドはスーパーソフトスタートにしてメルセデスを揺さぶろうと考えていた。
だがリカルドは計画通りスタートでスーパーソフトの有利さを生かしロズベルグを抜いたが、フェルスタッペンは順位を落とし当初の計画は失敗した。
それでもリカルドは好調に走り続けて2位は確実と思われた。ところがVSC(バーチャル セーフティ カー)がレース半ばに入り順位を失った。
スタートでスーパーソフトを履き、最初のタイヤ交換でソフトにしたリカルドは、ソフトスタートでミディアムに交換したロズベルグより早め早めにタイヤ交換をしなければならない。
25周目に最後のタイヤ交換をしたリカルドは、ロズベルグがタイヤ交換をすれば2位になれるポジションにいたが30周目にVSCが入りラップタイヤが落ちた。その瞬間にメルセデスは2台を連続してタイヤ交換する為に呼び寄せた。
これによりロズベルグは通常時よりも約7秒得をした。つまり本来であればロズベルグはタイヤ交換するとリカルドの後ろに戻る予定だったのが2秒前で戻ることに成功したのである。
このあたりのすばやく正確な判断は今年メルセデスが何度も見せてきた。これがあるから何度かピンチに立たされてもメルセデスは逆転することができていた。それと正反対なのがフェラーリである。
リカルドにとっては不運だったが、それを活かしたメルセデスの判断が見事だった。そしてロズベルグにとってこの追加で得た3ポイントはチャンピオン争いで大きな価値を持つ。これでロズベルグとハミルトンとのポイント差は26ポイントである。これはロズベルグがリタイアしてハミルトンが優勝しても逆転できない差である。
今のロズベルグにとって重要なことは優勝するとではなくて必ず表彰台に上るかハミルトンのすぐ後ろでフィニッシュすることである。彼はもはや勝つ必要はない。もちろん勝利を目指して走らなければ、逆転される厳しいF1の世界だが結果だけ見れば、この日のロズベルグは必要にして十分な仕事を成し遂げたと言える。
ただこの三カ月間、勝利がなかったハミルトンではあるがそれでも、ロズベルグとの差はまだ26ポイント差である。まだ自力で逆転できないがプレッシャーをかけることができる差になってきた。
チャンピオン争いは最終戦までもつれそうな気配である。