そして最大の山場はやってくる。バーチャルセーフティカーVSCが出てそれが解除される直前にハミルトンがタイヤ交換したのだ。もちろんソフトタイヤである。だがこの時点でレースフィニッシュまで 周。メディアムタイヤの限界は35周と予測されていたから、ソフトでこの周回を走りきるのはかなりのギャンブルである。だがメルセデスにはこのタイミングでタイヤを交換しなければならない理由があった。
VSCの時は当然ラップタイムを落として走らなければならない。だからこのタイミングでタイヤ交換すればロスタイムを大きく削減できる。実際VSCの時、ベッテルはハミルトンに7秒程度のリードがあった。だがVSCあけにタイヤ交換したベッテルがピットアウトした時にハミルトンと激しい順位争いをした。つまり差がゼロになったわけである。
もちろんこれには新品のミディアムを履いたハミルトンのタイムが良かったこともあるが、VSC時にタイヤ交換してロスタイムを少なくしたことが大きく影響している。
そしてこの数周後、ベッテルはハミルトンに抜かれてしまう。これには今年からDRSゾーンが100m長くなったことも影響している。もしDRSゾーンが昨年同様の長さだったら、どうなっていたかは興味深い。
だが本来最後のスティントでミディアムを履くベッテルの方が先にVSC時にタイヤ交換することができた。ミディアムなら最後まで走ることができたからである。にもかかわらずベッテルはステイアウトし、ハミルトンは最後まで持つかもわからないあの時点で履き替えている。
ベッテルは抜かれてから数周後には、ハミルトンと同じタイムで走れるようになっていた。タイヤのタレはソフトの方が大きいからである。ということはもしかベッテルがVSC時にタイヤ交換していれば7秒差をキープできていた。
もしそうならばハミルトンはベッテルに追いつくまでにソフトタイヤの一番美味しいところを使い尽くしてしまいバトルしても追い抜けなかった可能性は高い。
だからこそあのタイミングでベッテルがタイヤ交換せずにステイアウトしたのには疑問が残る。逆にあの時点では最後まで持つかわからないにもかかわらず、ハミルトンにソフトタイヤを履かせたメルセデスの判断は素晴らしかった。
もちろんコース上でベッテルを抜いたハミルトンはすばらしい。DRSゾーンが延長されたとはいえ、このコースでオーバーテイクするのはかなり難しい。
何回も話しているがこの4年間のメルセデスの作戦は素晴らしい。何回も作戦で勝利をしている。マシンよし、ドライバーよし、作戦よしだからメルセデスは3年間勝ち続けていられるのである。
そしてフェラーリはこの数年作戦で勝利を何回も失っている。絶好調のフェラーリとベッテルを阻むものは、メルセデスとハミルトンだけでなく、自分自身の作戦にはあるのかもしれない。