ロータスのテクニカルディレクターであるニック・チェスターはバーレーンテストで、ロータスが採用した二本牙ノーズの効果を証明できたと述べた。
ロータスの新車E22は、バーレーンテストで初めて走行したが、この特異なノーズは有効に機能したことを確認できたと語った。
彼らはこのノーズには大きなアドバンテージがある事を認めている。だが本当にそうだろうか?
ロータスからは昨シーズン途中にテクニカルディレクターだったジェームス・アリソンがフェラーリへ移籍している。彼は当然このアイディアを知っていたはずである。
またトロロッソのジェームス・キーもこのアイディアを考えたが、採用しなかったと話している。
二本牙の間から多くの空気が取り入れられることを考えると、確かに空力的なメリットはあるだろう。だが問題がないわけではない。
彼らはこのノーズを開発するのに難しい部分は、クラッシュテストを通過することであると認めている。細長いノーズでクラッシュテストを通過するのは難しいだろう。では彼らはどうしてクラッシュテストを通過したのであろう。当然、強度を増しているはずである。そしてそれは重量増をまねく。
フロントノーズの強度を増して、重量が増えるとどうなるのか?これはマシンの旋回性能を悪化させる。つまりマシンが回りにくくなるのである。これでは非常に不都合がある。
つまり他のデザイナー達は当然、このソリューションがあることは理解した上で、採用しなかったと考える方がいいだろう。メリットとデメリットを考えて採用しなかった。
今年のマシンをみるとノーズが高いマシンも低いマシンもある。つまりこの部分のソリューションは1つではない。ということは多くの解釈が可能であり、どれを採用しても大きな差がないということでもある。
もしロータスの二本牙ノーズが圧倒的に優位であれば、他のチームもノーズが重くなろうが必ず採用するはずである。また限られた時間の中でノーズの強度問題を解決するために時間を取られたくなかったという現実的な問題もある。
得られるメリットとデメリットを評価した結果、ロータスは採用し、他は採用しなかった。F1マシンの設計とは常にメリットとデメリットを天秤にかけて、判断することである。だからこそ、その判断基準に人間の哲学や意志が反映されて、とても興味深いバラエティがでてくる。
そのソリューションが正解だったのかは、開幕戦が開催されるまで誰にもわからない。今はもうすぐ来る開幕戦を楽しみに待つしかない。