リカルドの失格はFIAが導入した燃料流量計の数値とレッドブルが独自に計測した数値に差があったために起こった。
レッドブルのリカルドは2位フィニッシュした後に、燃料流量上限をコンスタントに超過していたとして、失格処分になりレース結果から除外された。
金曜日に燃料流量を正確に計測できなかったために、レッドブルはリカルドの燃料流量計を土曜日のフリー走行3回目の前に交換したが、FIAはレッドブルに対して予選後のパルクフェルメで元のセンサーに付け直すように指示。交換した流量計も満足いく数値を計測できなかったのが、その理由である。
またFIAはチームに対して、規約に合うことを確実にするために、レースに向けて燃料流量を修正するように要求した。チームはレース前に規約違反した場合には、失格にすると警告されていた。
レッドブルはセンサーの信頼性不足のため、自分たちが開発した燃料流量計測を実施した。それはFIAとは違う数値を示した。
つまりFIAは自分たちの計測機器の数値だけが正しく、他は認めないと述べている。一方のレッドブルはそもそもFIAの計測機器が不正確であるのだから、自分たちの方法で計測せざるを得なかったというのが彼らの主張である。
FIAはレース中にテレメトリーのデータを見たが、リカルドの燃料流量は依然として高かったので、レッドブルに対して指示に従い燃料流量を規約に合うよう減らすよう求めたが、レッドブルは間違った数値に対して合わせるわけにはいかないと考えて修正しなかった。
FIAは元のセンサーがFP1で違う数値を示していたとしても、それはまだ承認された装置であり、チームはFIAからの許可がなければそのセンサーを用いて、FIAが定めた方法で燃料流量を計測する義務があると述べている。
つまりFIAは不確実な計器でも、それに合わせなければならないと主張している。これは確かに一見、主張に合理性があるように見られる。そうしなければレギュレーションの公平性が担保できない。
ではなぜレッドブルがここまで燃料流量計の正確性にこだわるかというと、それが勝負を決める要素になりかねないからである。
元々この燃料流量計は誤差が約3%程度あるといわれていた。これだともし燃料が少ない場合、15馬力近く失い、タイム的には0.3秒ほどを失う計算になる。これは死活問題である。
だが最終的にこの流量計は1%以下の誤差に修正したとされて導入されていた。これならばギリギリ許容範囲である。だが実際に金曜日走ってみたら、数値は違っていた。だからレッドブルはスチュワードから修正するように指示されたにも関わらず無視した。
だが当然だが同じ事はライバルチームにも起こっていた。では彼らはどうしたかというと自発的に燃料流量を誤差であった4%減らしていた。メルセデスのトト・ウルフは自発的に燃料流量を削減したので、レースでは0.5秒失っていたと認めている。フェラーリも同様の措置をした。
あるチームのテクニカルディレクターは「燃料流量の信号にはノイズが混入して正確に計るのが難しい。それでも我々は常に燃料流量を100kg/h以下で管理しなければならない」と述べている。
これらのことを総合すると今回はレッドブルがこの処分を受け入れるしかないだろう。もしFIAがレッドブルを無罪にしたら今後、燃料流量を制限することが難しくなる。
これは他の違反でもそうなのだが、基本的に違反がないという事実はチーム側が証明しなければならない。
今回もレッドブルとルノーは詳細なデータを提出して反論しようとするだろうが、FIAはチーム側が出したデータには信頼性が欠如しているとして却下するだろう。
これは以前、ホンダがコレクタータンク問題で失格になった時と同じである。
レッドブルはプレシーズンテストで不調が続き、追い詰められていて余裕を失っていた。今回はそんな状況も彼らの判断を左右したと思われる。