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フライアウェイ3レースを終えて

 ▽レッドブルは今年も速かった シーズン前の予想通り、レッドブルは最速だった。 だからベッテルが開幕3レースを1位、1位、2位で終わった事は驚きではない。 彼らのマシンは、空力的に最も効率が良く、特に予選では2位以下を大きく引き離している。 とことがそんな彼らに大きな弱点が見つかった。 KERSである。 彼らのマシンにもKERSは搭載されているのだが、システムにトラブルが多く、冷却性能に難点があり、使えないケースが目につく。 バッテリーは大きなエネルギーを備蓄するので、高温になると発火したり、最悪爆発することもあるので、温度管理は重要であるが、彼らはうまくできていない。 彼らのKERSはモータージェネレータはルノー製を使用しているが、それ以外のバッテリーやインバータや制御システムは独自の仕様だ。 これは非常に珍しい。 他のチームは、メーカーから供給されたKERSユニットをそのまま搭載している。 もちろんパーツの搭載位置は各チーム別々だが、メーカー製を使用するのが基本。 これはメリットにもなるし、デメリットにもなる。

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  メリットは自分たちのマシンにカスタマイズしたユニットを作成できるので、設計的には大歓迎だ。 だが独自パーツは、自分たちのマシンだけのパーツなので、テスト走行の距離が限られ、信頼性の確保が難しい。 メーカー製ならば他のチームで発生したトラブル情報を共有して対策できるが、レッドブルにはそれはできない。 そして彼らはそのメリットをマシンの速さで、そしてデメリットをKERSの信頼性不足という形で享受している。 F1を含めてクルマの設計開発とは複雑怪奇で難しいことを実感させられる。 ニューウェイは他のパーツ同様、KERSユニットを空力的に不利にならないよう、設計しているので、KERSのパーツも極限まで小型化されている。 バッテリーは小型化すれば当然、温度的には厳しくなるし、搭載位置がエンジンの直後、ギアボックス前方のサイドに装着されていて、さら温度管理が難しい。 当然彼らも冷却してはいるが、想定以上に温度が上昇している模様だ。 ただニューウェイがこのことを知らないで設計したとは考えづらい。 彼は冷却はある程度、妥協しても空力を優先したと思われる。 実際彼は、KERSを搭載したくなかったと発言している。 だがスタートでのアドバンテージは明確だったので、搭載に踏み切った。 つまりニューウェイは極端な話、スタートだけKERSを使えれば、後は空力の力で速く走って勝とうと思っているのではなないか。 だがマクラーレンの追い上げが想像以上だったので、レッドブルに余裕がなくなり、彼の目算は狂ってしまった。 この様にKERSの問題が設計要因からきているとすれば、解決するのは簡単ではないだろう。 幸い次のトルコまで3週間あくので、この期間中に解決の目処をつけたいのだが、 レッドブルの技術陣がどのような対策を施してくるのか注目される。 しかし事前テストができない中で、完全に解決するのは難しいだろう。 しかも彼らには2009年にKERSを搭載した経験もない。 もしトルコGPで解決策が提示されなければ、この問題は7月頃まで長引きそうである。 ▽驚きのマクラーレン 今シーズン最初の驚きはマクラーレンが速かったことだ。 二人のドライバーがあまりの速さに驚いているのだから、それも当然であろう。 シーズン前から不調が言われていたマクラーレンは信頼性不足も重なり、少なくともシーズン序盤は苦しい戦いが予想されていた。 ハミルトンとバトンも入賞争いが現実的目標だろうと発言し、開幕戦のアップデートにも過大な期待を持っていなかった。 ところがマクラーレンは急遽持ち込んだアップデートパーツの効果でレッドブルに急接近した。 なにしろ持ち込んだ排気関係のパーツは、カーボンではなくチタンだったので、彼らがいかに慌てて製作して持ち込んだかが分かる(2戦目以降はカーボン製パーツになった)。 開幕3レースの結果は1勝2敗であるが、逆の結果になっいてもおかしくないほど、マクラーレン、特にハミルトンの速さは際立っている。 さらにKERSの苦しむレッドブルに対して、マクラーレンのKERSは問題なく、性能的にも最高レベルで、チームにアドバンテージをもたらしている。 これは2009年に搭載していた経験が活かされている。 バーレーンがキャンセルになったことはマクラーレンに有利に働いており、これはチャンピオンシップ争いに大きな影響を与えそうだ。 ▽もっと驚きのルノー マクラーレンの活躍も驚きであるが、彼らの実力をもってすれば、それほどでもないとも言える。 彼らの優れた開発能力は有名であり、シーズン序盤はダメ車でも、終盤には勝てるクルマになることもしばしばある。 でもルノーが速いとなると別である。 彼らはアロンソを有して2005年と2006年に連続チャンピオンを獲得した実力チームだが、それ以降は難しいシーズンを過ごしてきた。。 昨年はクビサの加入で復調の兆しが見えたものの、今年もコンスタントな入賞が現実的目標だと思われていた。 ところがルノーは開幕2レースで連続表彰台。 これは、さすがに予想できない。 開幕戦ではペトロフが3位入賞。 これには心底驚いた。 しかも次のレースではニックも連続3位。 彼らのマシンの競争力は、強力である。 今年のマシン開発トレンドは、排気ソリューションである。 排気ガスをマシンのどの部分から排出し、どの部分へと流すのか。 それによりダウンフォースの量が左右される。 そしてルノーは、その排気ガスをマシンの前方(正確には側方なのだが便宜上こう呼ばせていただく)から出している。 これは理屈の上では、ダウンフォースが増えると予想できるのだが、予想と現実が違うのはF1の常である。 マクラーレンもテストで前方排気を試したが、効果が少なく断念している。 またニューウェイも前方排気を検討はしたが、採用を見送っている。 だからこの前方排気の導入は、リスクの高い選択だったのは間違いがない。 もしこの前方排気が失敗していれば、取り返しのつかない事態になっていただろう。 だが彼らは成功し、大きなアドバンテージを手に入れている。 どんなに優れたアイディアもすぐにコピーされるF1界だが、他チームがこの前方排気をすぐに取り入れるのは難しい。 後方排気のマシンを前方排気に改造するのは、かなりの工数が必要となる。 サイドの衝撃構造を見直して、シャシーを作り直し、熱対策をして、FIAの認証を再び受けなければならない。 しかもここまでして改造しても、速くなるかどうか未知数である。 マクラーレンの例を見てもわかるように、前方排気だから有効なのではなくて、排気位置と方向が重要であり、事前テストで確認できないシーズン中に、これを採用するのは事実上不可能と見て良いだろう。 だがルノーのドライバーラインアップは、強力とは言えない。 アロンソクラスのドライバーがいれば、チャンピオンを狙うことも可能なポテンシャルを感じる。 これだけの実力を活かせないは誠に残念である。 ▽復調の兆し?ウェバー 昨シーズン最終戦から不調が続く、マーク・ウェバー。 中国GPでは予選18位から追い上げ表彰台をものにしたが、ベッテルと比べられるとつらい。 ただこのマーク・ウェバーというドライバーは侮れない。 攻めているときのウェバーは手がつけられないし、、ハードなドライビング・スタイルは追い越しが極めて難しい。 ランキングで出遅れたウェバーは、今後全力で追いかけるだけなので、こういう時の彼は脅威である。 次のトルコとスペインはレッドブルサーキットなので、この2レースで勝てるどうかで、今シーズンの彼を占えるだろう。 ▽不調のフェラーリ 確かに彼らのスピードはレッドブルに対して遅いが、それも予想の範囲内であると思う。序盤は差があるが、シーズン中に差を詰めていきたいというのが彼らの思いだっただろう。 ところが、彼らにも想定外の事実があった。 想定外だったのは、マクラーレンが速かったことである。 これにより彼らの速さの順番は、レッドブル、マクラーレンに次ぐ3位になった。 好調ルノーの存在を考えると、フェラーリは4位ということも考えられる。 これではレッドブルにプレッシャーを掛けることもできないし、獲得できるポイント数も少なくなる。 これは長いシーズンのチャンピオン争いを考えると歓迎できる事態ではない。 だがアロンソは、チームにマシンのスピード不足の原因解明と対策を迫っているだろう。そしてチームも彼の要望合わせてマシン開発を進めていく。 次のトルコに大幅なアップデートを持ち込む予定のフェラーリ。 今シーズンの明暗を分ける、非常に重要なアップデートになりそうである。 アロンソがいる限り、序盤不調でもフェラーリを侮ることはできない。 ▽意外と好評!ピレリタイヤ シーズン開始前は、かなり酷評されていたピレリタイヤ。 だがシーズンが始まる前から、批判するのはフェアではなかったようだ。 シーズンが始まると、ピレリはかなり好意的に評価されている。 実際のピットストップ回数も、2回から3回で予想より少なかった。 ピット戦略も分かれることが多く、それもレース展開を面白くしている。 中国GPで、ハミルトンが豪快にベッテルをパスしたが、これもタイヤ戦略の違いによりもたらされたものである。 タイヤのタレも読みにくく、タイヤ交換時期の判断が極めて難しい。 しかもタイヤの寿命は突然訪れるので、タイミングを逃すと1ラップ1秒から2秒ロスして、順位を落とすこともある。 後半のタイヤを考えると前半でできる限り引っ張りたいが、タイムロスも避けたいので、交換の判断が非常に難しい。 中国GPの最初のピットインのタイミングで、ベッテルはもう少し引っ張れそうだったが、早めに入れてしまい、終盤のハミルトン逆転劇にを演出した。 2ストップで行くならば、3ストップのマクラーレンより遅くピットインしなければならなかったのに、ほぼ同じタイミングでピットインしたのは、こういう理由があった。 もっともこのピレリタイヤの高評価は、シーズン前の評価があまりにも低かったからとも言えそうで、手放しでは喜べない。 次のトルコは、1年を通じてタイヤに最も厳しいコースの一つであり、ここで通用すれば、どこへ行っても問題ないであろう。 ▽DRSの効果はあり こちらもシーズン前からいろいろと言われていたデバイスであるが、直線の長いサーキットではオーバーテイクを増やす効果が認められている。 特に速いマシンが後方から追い上げる場合の効果は抜群。 中国GPでのウェバー怒濤の追い上げは、DRSがなければ難しかった。 ただ同程度のスピードのマシン同士の場合、追い抜きは簡単ではない。 FIAも簡単に追い越しをさせたいわけではなく、あくまでも追い抜きの回数を増 やしたい意向であるので、このシステムはFIAの目論見通りということになる。 最初はドライバーの操作が忙しく、文句を言うドライバーもいたが、なれてきた模様で苦情を言うドライバーはいなくなった。 だが直線が短いストップ&ゴー・サーキットでは、効果が限定的なので追い抜きは昨年同様難しい。 しかし最近のティルケ・サーキットは長い直線が名物である。 これまで、彼のサーキットは追い抜きができない最大の理由の一つとして批判され続けてきたが、ひよっとしたら汚名を返上できるかもしれない。 もっとも彼の努力ではないけども。 ▽ザウバーはなかなかいい 昨年の序盤の成績からすれば、今年のザウバーは天国である。 中堅チームの場合、まずはそこそこの速さと信頼性がなければ、始まらない。 今年もジェームス・キー率いる技術チームの開発能力は期待できるし、今後が楽しみである。 予選で上位にはいることが可能であれば、荒れたレースで表彰台も可能になる。 2011年末にトップチームのシートが空く可能性がある。 だから可夢偉は、前半に好成績を上げる必要がある。 後半ではなく前半である。 そうすれば移籍市場の主役になれる可能性があり、前半戦に一度表彰台が欲しい。 そうすれば彼のキャリアのドアは大きく開かれる。 これまでトップ・ドライバーに登り詰めたドライバーは、普通のマシンで驚くべき結果を残し、ステップアップしている。 それこそが偉大なドライバーと普通のドライバーを分ける大きな壁である。 大きく飛躍できるか否か。 その分岐点に可夢偉はいる。

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