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2012 Rd14 シンガポールGP観戦記 <BR>明暗別れたルイスとベッテル

▽ハミルトン 優勝目前からリタイヤ
余裕で勝利するはずだったハミルトンはなぜ止まってしまったのだろうか。
シンガポールGPのサーキット、ヤスマリーナベイはとてもシフト回数の多いサーキットである。1周あたりのシフト回数は80回前後。コーナーの数も23と多い。
さらにこのコースは縁石を乗り越えて走る部分が多い。そしてそれはタイムを短縮するためのポイントでもある。より直線的に縁石をカットできればタイムを短縮することができる。
縁石を乗り越えるとタイヤは一瞬浮く。その瞬間、タイヤのグリップはゼロになるが、直後にはまた路面と接触してグリップが回復する。つまり負荷がゼロから通常の状態にまで一瞬にして戻る。これがギアボックスなどの駆動系には大きなストレスになる。
さらにルイスは予選でマシンのリアタイヤを壁に接触させている。もちろんチームはこれを点検し問題ないと判断して送り出してはいるのだが、全く影響がなかったとは言い切れない。
ルイスは攻撃的なドライビングが持ち味なので、他のドライバーに比べて縁石を積極的に活用していたとも考えられる。リタイヤの理由はギアボックスの内部の故障だった。
これで25ポイントを失ったルイスはアロンソとのポイント差が52点となった。残り6レースあるがアロンソがコンスタントにポイントを稼いでいることを考 えると厳しい差である。ちなみにアロンソは今シーズン1レース当たり平均13.8ポイントを得ている。この平均獲得点数を残りレースでかけると計算上アロ ンソはシーズン終了時に82.8ポイント追加できる。これに現在の差を加えるとルイスとの差は134.8ポイント。つまりルイスは残りの6レースを全勝し ないと逆転できない。それかアロンソのリタイヤを期待するしかないが、それは望み薄だろう。

▽ベッテルはなぜQ3で失速したのか?
3 回のフリー走行全てでトップタイムをマークし、Q2でもハミルトンに肉薄するタイムを出したベッテルはなぜQ3で失速したのだろうか。実はレッドブルは最 近、フリー走行ではいいのだが予選では失速することが多い。今年のピレリタイヤはとても扱いがデリケートであるのは周知の通りである。昨年まではブロウン ディヒューザーを活用し使いこなしていたレッドブルも今年は苦戦している。特にシンガポールGPのようなストリートサーキットは普段レースをしていないの で、路面の変化が激しい。F1マシンは走れば走るほどタイヤのゴムが路面に張り付き、グリップが増していく。極端な話、1周毎に路面コンディションが変 わっていく。つまり予選でもQ1、Q2、Q3は全て路面の状態が違っている。
ベッテルはQ3でQ2のベストタイムを記録することができなかった。 ベッテルはアタックに出たタイミングが良くなかったといっている。確かにQ3の最初のアタックでは前後にマシンがある状態で、思うようなペースでアウト ラップを走れずに、タイヤを温めきれなかったようだ。だが2回目はそうではなかった。それでも彼はQ2のベストタイムを記録できなかった。つまり彼らは Q3の変化した路面状況にうまく対応することができなかった。確かに予選が始まれば大きな変更はできないが、それでもタイヤの空気圧など細かい修正はでき る。レッドブルはその部分を修正することができなかった。
もっとも予選では良くない彼らも決勝ではいいペースを見せている。
それに彼らはシンガポールに新しいフロントウィングとリアウィング。そしてアップデートしたリアサスペンションを持ち込んだ。そして、それらは全て予想通りに機能して、優勝戦線に返り咲いた。次の鈴鹿は例年彼らが得意とするサーキットであり、いい結果が期待できそうだ。

▽バトンのペースが伸びない理由
バ トンの第一スティントはとてもよかった。1周目に3位に上がると序盤こそハミルトンとベッテルに引き離されたが、スティントの後半には自己ベストを出して 肉薄。だがそこまでだった。最初のストップでソフトタイヤに交換したバトンはベッテルほどのペースはなかった。バトンはソフトだと思うように走れなかった といっている。ソフトタイヤは動作温度領域がスーパーソフトよりも高い。しかも温度変化に敏感である。ソフトタイヤでは長い距離を走りたいのでペースを抑 えるとタイヤ温度が下がり、グリップを失う。この現象はシーズンの序盤から中盤にも現れていた。彼がソフトではなくミディアムやハードを好むのはこの温度 変化に対して鈍感であるからである。タイヤに優しく走れるのはバトンの長所の一つではあるのだが、今年のピレリタイヤとの相性は良くない。
それで も彼には勝つチャンスがあった。バトンの最初のストップは14周目。ベッテルは10周目。明らかにタイヤの寿命はマクラーレンが有利だった。もしセーフ ティカーが入らなければベッテルは3ストップを強いられ、バトンは2ストップで最後までいけただろう。もし2回目のセーフティカーが入らなければベッテル の最後のスティントは限界に近かった。だがシンガポールではセーフティカーはつきものである。残念ながらそれなしのシンガポールGPはないだろう。

▽全くいいところのない可夢偉
可 夢偉は今回いいところがなかった。予選ではQ1で落ちレースでは何とか粘ったがそれでも13位。今回のレースではこれ以上は望めなかった。それにしてもザ ウバーのマシンはサーキットによって好不調の波が大きい。ザウバーの空力性能はいい。今のF1において空力性能こそは万能の神である。ダウンフォースが大 きければタイムもいいし、タイヤにも優しく走ることができる。しかし今回のザウバーは全くダメ。どうしてこういうことが起きるのだろうか。そこにはあまり お金がない中堅チームの悲哀があると思う。マクラーレンなどは高度なシュミレーション技術を持っている。彼らが持ち込みのセッティングを外したという事を 聞いたことがない。さらに人の質の問題もある。マクラーレンの人員はとても優秀である。たとえ最初のセッティングを外しても、週末の間に修正してしまう。 残念ながらザウバーにはそれもない。だから苦戦する。
しかし鈴鹿はザウバーのマシンにぴったりだ。だから好成績を期待できる。だが表彰台に乗れる かというと悲観的である。今のF1はドライバーの力は重要であるが、チームの総合力が問われる。マシンだけよくてもダメだし、ドライバーだけが良くてもダ メ。そう考えるザウバーが今年いいマシンを持ちながらも優勝できない理由がおわかりいただけるであろう。

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