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F1 今そこにある危機と可夢偉の未来

2012年シーズンは最終戦でチャンピオンが決まり、盛り上がったF1ではあるが、実は今水面下で危機的な状況が進行している。非常に華やかなF1の世界であるが今、財政的に危機的な状態にあるF1チームが大半を占めることはあまり知られていない。 2012年シーズンにエントリーした12チームのうち財政的に万全なのはレッドブル、フェラーリ、マクラーレン、メルセデスの4チーム。それ以外は大なり小なり負債を抱えている。つまり借金があるということだ。もちろん企業活動であるから負債があってもそれが健全であれば、何の問題もない。だがこの負債はかなり問題がある。 F1において、スポンサーからのお金とFOMからの分配金が主要な二大収入源となる。スポンサーからのお金はわかりやすいと思う。マシンに企業のロゴを入れて、その見返りにお金をいただく。これは看板に広告を載せ収入を得るという昔ながらの方法である。 ではFOMからの分配金とはなんだろう。FOMはF1の興業面を一手に引き受ける団体で、有名なバーニー・エクレストンがその主である。そのFOMの収入源は主に二つ。F1を開催する興行主から得る開催権料と各国のTV局から得る放映権料である。日本GPの場合、モビリティランドが契約しFOMに支払い、日本でのF1放送権はフジテレビがFOMに支払っている。開催権料の相場はモナコの0円から最近開催を始めた新興国では20億円以上とも言われいる。最近はF1の開催を希望する国が多いので、相場は急騰して各GPの採算を悪化させている。 以前はバーニーの個人会社の色彩が強かったFOMであるが、最近は投資会社の資本がはいり収益を上げる必要性に迫られている。その為、FOMは高額の開催権料を支払うことのできる新興国との契約を増やし、伝統あるヨーロッパでの開催が減らされているのはご存じの通りである。 もっともFOMの収入の約半分はチームに還元されるから、それはチームにとっても悪い話でもない。その額は複雑な計算式で算出されるが、簡単に言うと前年度の成績がいいチームほどたくさん受け取れるシステムである。それにプラスしてF1に長年参戦しているチームにはそれに見合った割り増しがある。 収入金額はコンストラクターズランキングの10位まで支払いがあり、11位以降にはない。だから10位と11位では大違いである。最終戦でケータハムのペトロフが11位になり、コンストラクターズランキングでマルシアを抜いた時、ケータハムが喜々としたのはとしたそれが理由である。 ちなみに上位チームでは50億~100億円、中位から下位のチームは10億円~50億円くらいと言われいる。ただこの金額だけでF1チームを運営していくことは難しい。 ではチーム収入のもう一つの柱でもあるスポンサーはどうであろうか。これが実は今、危機的な状況になっている。2008年のリーマンショック後に急速に冷え込んだ世界経済と最近のユーロ危機の影響を受け、スポンサーからの収入は減る一方である。 2012年もスポンサーのロゴがついているマシンは多いが、そのロゴの中でもお金を支払っていいないものや、支払っていても金額少ないロゴが増えている。ザウバーで例えれば、お金を支払っているのはメキシコ関係のロゴだけで、チェルシーなどのロゴは資金的にはほとんど役に立っていいない。その頼みの綱のメキシコマネーも金額は2007年以前の相場に比べると数分の一。チームの運転資金を支えることができない。その額は十数億円とも言われており、これでは分配金を含めてもチームの運転資金を賄うことができない。 チームを運営するには最低でも数十億円、中堅チームで100億円前後、トップクラスだと200億円から300億円と言われいる。 そうなると大半のチームは赤字となる。しかも数十億円規模の赤字である。こうなるとどういう現象が現れるだろうか。そう、みなさんもご存じのペイ・ドライバーの登場である。 ▽ペイ・ドライバーは是か非か 実はペイ・ドライバーの存在自体は昔から存在しており、有名なところでは世界チャンピオンに三回輝いたニキ・ラウダがいる。彼はF1に参戦する時に借金して得たお金を払いシートを得たことは有名である。7回のワールドチャンピオンになったミハエル・シューマッハーもジョーダンからデビューする時はお金を持ち込んでいる(この時はメルセデスの支払い)。 昔はペイドライバーだけでなく、自分でお金を払い中古のマシンを買い、即席チームを組成して参戦する強者までいた。だからペイドライバー自体は珍しくも何ともないのだが、今や実力だけでシートを得ることができるのは、24のシートのうち半分にも満たない。これはかなり少ない。 ここで読者の皆さんもふと疑問に思うだろう。お金を持ち込むドライバーもいいけど、速いドライバーを乗せてポイントをたくさん取って、分配金をたくさんもらった方がいいのではと。それは理論的に考えるとその通りである。ところがお金がないと人間は理屈では動けなくなる。分配金が支払われるのは翌年である。つまり今年の運営資金に窮すると来年のことは考えることができなくなる。 それに中堅チームが翌年いきなりランキングトップになるというのは誰がどう考えても無理なので、それならばある程度まとまったお金を持ち込んでくれるドライバーを優先しようとなるわけだ。 もちろんチーム首脳も馬鹿ではないから、ドライバーの持ち込む金額と過去の実績と能力。それにエンジンサプライヤーとの関係など総合的に考慮して、ドライバーを決めている。それに来年のスポンサー交渉などが複雑に絡んでくるので、ドライバーの選定には時間がかかることになる。12月になっても来年のドライバーが決まっていないチームが複数存在するのはそういう事情があるからである。 では、小林可夢偉の場合はどうなのだろうか。 ▽可夢偉はどうなる? とここまで書いたところで、可夢偉が2013年のシートを諦めたことが判明した。グロージャンがロータスと再契約したと報じられてのことだ。彼はこの短期間に10億円近い資金を集め、ロータスのシートを狙っていたが、もともとこれにはかなり無理があった。 元々可夢偉はマッサの代わりにフェラーリ入りを狙っていた。それが終盤戦のマッサの復調でかなわなくなった時点で、2013年に競争力のあるシートを得ることが難しくなっていた。 グロージャンのマネージメントはロータスの代表をつとめるエリック・ブーリエが主催する会社であるグラビティが担当している。それにロータスのスポンサーのトータルもグロージャンを支援している。 唯一チャンスがあると見られていたのが、ロータスの経営が危機的状況で、経営権が他に譲り渡されれば、他のドライバーにもチャンスがあると見られていた。だが今回、コカコーラとハネウェルとのスポンサー契約で来年の運営費用の目処がたつ。そして彼らは規定の方針通り、グロージャンとの契約を延長することを選択した。 では可夢偉の2013年、2014年はどうなるのだろう。 今年に関してはリザーブドライバーかピレリのテストドライバーが選択肢にある。だがリザーブドライバーとして契約してしまうと、他のチームのドライバーに怪我などで空きができても乗ることができない。だから2014年以降のシートが約束されない限り、選択肢としてはないと思う。 どちらにせよ2014年のシート争いは既に始まっている。F1の世界は一瞬先は何もわからない。 だがドライバーの実力だけでなんとかなる世界でもない。ドライバーの実力がなければ話にならない世界ではあるのだが、お金も含めたマネージメントが非常に重要なのである。F1の世界は非常に狭い。人と人のつながりが全てである。今年なんらかのトラブルで突然、競争力のあるシートに空きが出るかもしれない。そのチャンスを活かすも殺すもドライバー次第である。 近い将来、可夢偉が競争力のあるシートを得られることを願いながら、今年最初のコラムをしめさせていただきたいと思う。 ではみなさんの今年が素晴らしい一年になることをお祈りしています。
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