ハミルトンの自信と勇気
スタートで少し出遅れたロズベルグは1コーナーで巻き返して前に出た。そこで勝負あったと思われたのだが、ハミルトンは続く2コーナーでインを突き返し前に出て、そのままアウト側へロズベルグをコース外へ押しやり、トップに立った。
鈴鹿サーキットはご存じのように追い抜きが極めて難しいコースである。同じマシンに乗っていれば、スタートで前に出た方が勝つ可能性は高くなる。例え追いかける方が1秒早くてもである。
だからこの2人はスタートにかけていた。特にロズベルグはである。彼はポールポジションからスタートするのであり、そこからハミルトンを打ち破ることは、チャンピオンシップのみならず、本人の自信の部分に与える影響はとても大きい。
今年ロズベルグはハミルトンにやられっぱなしであるから、ここでやり返さなければ、シーズンも残りが少ないので逆転は難しくなる。
だがハミルトンは逆襲の機会を狙うそのロズベルグを再び奈落の底へたたき落とした。それは表彰台でのロズベルグの顔を見れば一目瞭然である。ロズベルグの表情は完全に憔悴していた。
スタート直後のあの場面で2コーナーのインに飛び込むのはかなり勇気がいる。ハミルトンはポイントを大きくリードしているわけだし、あそこで無理をする必要は全くない。下手をすればメルセデスの2台が接触し、同士討ちの可能性すらあった。
だがそれでもハミルトンは、あそこでインに飛び込んだ。もちろん彼にはマシンをコントロールできる自信はあっただろう。それでもあそこで飛び込む勇気と、それをコントロールしてしまう技術には脱帽である。
これこそがロズベルグにはなくてハミルトンが持っている部分である。そしてアロンソやベッテルもまた同様の能力を身につけている。そこがチャンピオンになれるドライバーとそうでないドライバーの差である。もちろんここで話している内容は、ほんの少しの差である。ロズベルグが悪いドライバーといいたいわけではない。彼はクレバーでとてもいいドライバーである。
だがハミルトンとロズベルグは違う能力を持って、違うアプローチをするドライバーなのである。これが昔であればクレバーなロズベルグはハミルトンに対抗する術があった。昔はセッティング情報を今ほど共有しておらず、隠し技のセッティングも使えた。
だが今はセッティング情報は完全に共有化されており、隠しようがない。そうなるとハミルトンの様なナチュラルで速いドライバーに対抗するのは、難しくなる。
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