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ウェバーがベッテルに対抗できなくなった理由

777777777_MT_9016_34BC8D7238C515F51E8D2EF5C3B27FFD-s 以前、レッドブルがエキゾーストブローを利用して、不公平なほどの速さを実現する記事を書いた。ただそうすると読者の皆さんには一つの疑問が浮かび上がってくると思う。「なぜウェバーはベッテルほど速くないのか?」という疑問だ。 関連記事:ベッテルとレッドブル 驚速の秘密 関連記事:レッドブル 驚速の秘密2 関連記事:ウェバーは悪いドライバーだったのか? ベッテルとウェバーの結果比較 彼もかつてはベッテルやアロンソとチャンピオンを争ったドライバーである。遅いはずはない。しかしチャンピオンを争った2010年の次の年2011年からは苦戦を続けている。そしてレッドブルは2011年から本格的にエキゾーストブローを導入している。この事とウェバーの成績を関係がないと考える方がおかしい。つまり2011年以降の二人の差はエキゾーストブローが関係している。 結論から言うと、ベッテルはこのエキゾーストブローに最適化したドライビングスタイルに適応したが、ウェバーはできなかったと考えるとわかりやすい。 通常、ドライバーはブレーキングすると前に過重が移動し、リアの安定性が失われる。当然リアの車高も高くなりダウンフォースも失われ、それが更にリアの安定性を失わせる。ところがエキゾーストブローがあると、ブレーキ時にもリアに排気してダウンフォースを増やしてくれるので、リアの安定性を気にすることなくブレーキングができる。しかし長年積み重ねてきた経験を捨て去ることができないドライバーもいる。 実はベッテルも最初から、このエキゾーストブローのマシンをうまく操れていたわけではなかった。だが彼はこのマシンが速いことを理解すると、シミュレーターにのり自分自身のスタイルをこれにあわせていった。 昔もチームメイト同士で大きく差がついたことがあった。1992年、アクティブサスペンションを搭載したFW14Bでマンセルとパトレーゼ間でも大きさができた。この2人の差(マンセル9勝、パトレーゼ1勝)は、アクティブサスペンションに最適化したドライビングができたマンセルと、できなかったパトレーゼとの差である。同じ事がベッテルとウェバーにも起こっていると考えることはおかしくはない。こう考えるとエキゾーストブローなしだった2010年まではベッテルに対抗できていたウェバーが2011年以降苦戦を強いられている理由も理解できる。 ウェバーはあるインタビューで、「2011年、セバスチャンに後れを取っていたのは予選だけだった。その理由は、彼のドライビングスタイルのほうが、あのクルマに合っていたことと関係があるのは明らかだ」と語っている。 また2012年の方が結果が良かった理由は、2012年型車RB8が「より普通のレーシングカー」だったからだとウェバーは話している。2012年にエキゾーストブローは制限された。 しかし2013年は、再びベッテルが圧勝している理由としてウェバーはタイヤを上げている。「理解するのが常に簡単なものではなかった。ちゃんと作動領域に入れないと、すごくタイムをロスするんだ」とウェバーは説明する。 ベッテルが今シーズン一番とも言える独走を見せたシンガポールGPについては、ウェバーはこう話した。「ミディアムタイヤでは、バランスが良かった。タイヤから最高の力を引き出すことができた。でも、軟らかいほうのタイヤに変えたとたん、すごく走りづらくなった」 この発言も興味深い。二人とも同じマシン、同じタイヤを履いているにも関わらず、一方は速く、一方は遅い。この理由を考えると、ベッテルはタイヤが動作温度領域に入らなくても踏んでいけるのに、ウェバーは踏めないということが考えられる。タイヤが冷えた不安定な状態でもベッテルは踏んでいける。踏むからタイヤが温まる。タイヤが温めればグリップも増す。踏めない場合は、この逆でまったく速く走れなくなる。 またベッテルはウェバーよりもマシンをフラットにしてドライブすることができる。これは空力的にも安定するし、タイヤも4輪を平均して使うことが可能で、今のピレリタイヤにはあっている。逆に言うとウェバーは荷重移動を積極的に利用するスタイルで、これがレッドブルのマシンと今のピレリタイヤには最適ではなかった。ピレリタイヤは過重をかけ過ぎるとすぐにダメになる傾向がある。つまりウェバーにとっては過重をかけても問題のなかったブリヂストンタイヤが2010年限りで撤退したことは、かなり痛手になった。 これはウェバーが悪いドライバーで、ベッテルがいいドライバーだと言いたいわけではない。これはドライバーの個性の問題である。逆に言うと、ウェバーの方がマシンの動きを敏感に感じ取ることができるドライバーともいえる。実際にニューウェイはウェバーのマシン開発に関する貢献に賛辞を送っている。これはマシンの挙動を敏感に感じ取り、伝える能力がなければできない。 こう考えるとF1ドライバーは非常に複雑な能力が求められることがわかる。 ウェバーとベッテルの大きな成績の差は、ほんのわずかな個性の差なのかもしれない。

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